八幡橋と出丸堰

埼玉県で最も美しい沈下橋だった。

(埼玉県坂戸市小沼)

埼玉県立 川の博物館にあった荒川水系の全体パネル。

ここまで入間川の支流、小畔(こあぜ)川を見てきたので、続いて越辺(おっぺ)川流域を見ていく。

越辺川の源流は黒山三滝で延長はおよそ40km。多くの支流を持つ。その支流の中でも槻川(つきかわ)都幾川(ときがわ)高麗川(こまがわ)は流域も広く存在感のある川だ。支流が多いということは合流地が多いということでもあり、氾濫しやすい川と言い換えることができる。

また、その流域には沈下橋が多いのも特徴だ。

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越辺川の最下流の沈下橋である八幡橋に来てみた。

あれ? 通行止になってる?

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でもとりあえず堤防を登ってみよう。

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八幡橋は健在だった!

「通行止」の看板はあるけれど「渡ったら警察に突き出す!」って感じでもなく、なぁなぁで住民が渡っていた。

気持ちがいい場所なので市民の憩いの場となっている。

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越辺川には木造の沈下橋がいくつかあるが、この八幡橋は最も美しい橋だと思う。すぐ下流に堰があるので水面が広いからだ。

埼玉県全体で見ても最も美しい木造橋ではないかと思う。

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橋台はコンクリート製だが、橋脚、橋桁、橋床すべて木造。

橋床は角材を鉄のバンドで固めた造りになっている。ミャンマーで見た橋を思い出させる。

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通行止めの理由は木製の橋脚が腐ったため。看板に実際に腐っている写真が貼られている。

「腐ってるからね、それても渡る人は知らないからね!」っていうスタンス。それでいいのよ。

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この橋が最期に掛け替えられたのは2008年3月らしいので、今年(2022年)で14年目。意外に持たないものだな。材木の使い方がよくなかったのか。

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上流側には流木ガードがある。

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流木ガードも木製。

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実際に流木が引っかかっている。

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流木ガードは橋桁とは結合されていない。

損壊するときに巻き込まれないようにするためだろう。

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橋桁は木造だが、全体がひと続きの剛構造なので水圧で壊れるときは再利用できない形でひしゃげるだろう。

沈下橋ではあるが、いわゆる流れ橋ではない。

どうせ木製なので時々掛け替えが必要だから、数年に1回くらいは流されてもいいという設計なのか。

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橋上から見た上流の風景。

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橋上から見た下流の風景。

近くに見える抜水橋は圏央道で、側道や歩道橋はないから一番近くの橋は1km以上下流になる。

橋の東側には集落があるが、橋の西側は越辺川の氾濫時の遊水地のような低地なので人家はなく、通学や通勤で八幡橋を利用する人はいなさそう。

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あえていえば、対岸に農地を持っている農家が通るくらいだが、その需要も少なそうだ。

終戦直後の航空写真を見るとこの場所には橋がないので、八幡橋はそもそも実用橋ではなく、堰に付随した親水公園の設備だったのかもしれない。

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ついでに下流の出丸堰も見ておこう。

西詰めに魚道がある。

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魚道にはけっこうな水量が流れている。

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堰の中央に越流部があるが堤体が緩やかな傾斜なので、ほとんどの水棲生物はここを遡上できるだろう。

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2025年。そろそろ八幡橋が架け替わったころあいだと思って確認しに行ってみたら、廃橋になっていた。

2024年の増水で流されたあと再建されず、抜水橋に変わることもなく道路ごと廃止されたようだ。

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橋台も撤去されているので、もう復活することはないだろう。

(2022年11月06日訪問)