明戸床止め工と江南サイフォン跡

荒川本流の河床低下を食い止めている。

(埼玉県熊谷市川原明戸)

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大里幹線分水工から400mくらい上流に、やはり分水工がある。

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洗い出し仕上げの欄干を持つ古い橋からもわかるように、年代物の分水工だ。

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この分水の片側の水路は行き止りになっていて全量が本流に戻されている。

この行き止りの水路は、かつて荒川の対岸に水を送っていたサイフォンの呑み口につながっていた。

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これがサイフォンの呑み口の遺構。

意匠が凝っている。

むかしの荒川の「六堰」のうち、荒川右岸で廃止された2つの堰から取水していた御正(みしょう)用水と万吉(まげち)用水へは、北側の幹線水路からサイフォンを使って配水していた時代があった。

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サイフォンはコンクリート製で荒川本流の河道の下に埋設されていたのだが、すぐ下流で建設用の砂利を採取しすぎたせいで河床が低下し、それがだんだんと上流に拡がってついにはサイフォンが露出してしまった。

そのため荒川右岸には新たな幹線用水が建設され、このサイフォンは廃止された。

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いっぽう、河床の低下はそのままにしておくとどんどん上流へ遷移して、いずれ川の状態が変わってしまう。特にこのすぐ上流には地質の露頭地やコハクチョウの飛来地があるため、影響は避けたかった。

そこでこの場所で浸食を止めるための2004~2008年にかけて横断構造物が造られた。それが床止(とこど)め工だ。

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その場所は左岸側から見学できるようになっている。広々とした気持ちの良い場所だ。

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この床止め工で川の段差を固定し、人工の滝ができた。

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滝の段差は2m弱くらいはあるかな。

床止め工全体での落差は3.5mあるという。

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滝のすぐ下流には水流を弱めるような構造物が続く。

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最下部には小さなデコボコが造られているのは、市野川の合流地にあった落差工と同じパターンだ。

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川の水は、ほのかに洗剤の匂いがしている。

だいたい水量の減った川って時間帯で洗剤の匂いがするよね。田舎のほうだとすべての排水が浄化槽に入るわけではないから、洗濯水がどうしてもダイレクトに川に流れ込むからだ。

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中央に魚道が設置されている。

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このように角度の付いた円錐形の障害物を互い違いに並べた魚道をハーフコーン式という。

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床止め工の全景。

右岸(南側)からも近づけるけれど、荒れ地を通る感じになるので見学するには左岸(北側)からのほうがオススメだ。

(2025年06月19日訪問)