
葛川の上流部は台地上の浅い谷を流れている。
堤防に挟まれた高水敷を流れる

これが上流部の葛川の様子。
自然の川というより用水路という風情だ。

さて、葛川の最下流にある葛川水門をすでに紹介した。この水門は越辺川と高麗川が高水になったとき葛川に逆流するのを防ぐために作られたものだが、水門を閉じることで葛川の水も排出できなくなり、結局葛川が氾濫するという諸刃の刃ともいえる設備だ。水門を閉じたまま支流の水を排出するには排水機場が必要だが、排水機場を作ったとしても越辺川や高麗川の水位が堤防の計画高水位に達してしまえば排水もできなくなるという八方ふさがりな地勢なのだ。
そこで考えられたのが、葛川の水を上流部でバイパスして高麗川に落とす放水路だ。
葛川は台地の上を流れているので高麗川とは高低差があり、ポンプなどを使わずに自然の落差で高麗川に排水できるのだ。

放水路は2009年に完成し、記念碑も立てられている。


少しでも早く排水するため放水路は直線的。
人を寄せ付けない構造になっていて、誤って落ちたら脱出できない雰囲気。水はチョロチョロしか流れていないが見ていると怖い。

葛川放水路の全長は約1km。標高差は約7mある。

高麗川への合流点は樋門などはなく自然合流になっているが、高麗川から水が逆流することはなさそう。
こうして遠くから見ても、人工的すぎて胸がゾワゾワしてくる。

葛川からの取入口を見てみる。

放水路への入口は越流堤になっていて、一定水位を超えたら問答無用で放水路に排水されるようになっている。

砂吐きのような水路があってそこから常に放水路側に水が落ちているので、放水路が完全に枯れることはなさそう。

こちらが本流への落ち口。
蛇籠でふさがれていて、本流側へ流れている水はわずかだ。増水時にもほとんどの水量を放水路側へ落とすつもりなのだろう。
もっともこの放水路が計画通りに機能しても、2019年の台風19号では葛川水門付近で氾濫が発生した。合流地の悩みは尽きないのだ。
(2025年09月17日訪問)