灰俵沼

入間川の河跡湖。

(埼玉県川越市下老袋)

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川越市東部の野池「灰俵(はいだわら)沼」に来ている。この沼は入間川の旧河道、つまり河跡湖だ。

川越市周辺の河跡湖は以前にびん沼を紹介している。びん沼については「荒川の河跡湖」と書くべきなのか「入間川の河跡湖」と書くべきなのかは迷うところだが、ここ灰俵沼は明確に入間川の河跡湖と言える。

明治初期の地図を見ると入間川は平方河岸よりも上流で荒川と合流している。灰俵沼はそのころはまだ古川という荒川の支流だったから、荒川本流がこの灰俵沼の場所を流れたことはなかったと考えられる。

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地図で"⇩"部分が現在の灰俵沼である。このころはまだ川だったから荒川から肥船などがさかのぼって来たかもしれない。舟運として明確に史料に残っている川以外でも用水路を使って農作物や肥料を運ぶことがあったからだ。特に屎尿は江戸から船を使って地方に運搬していたから可能な限り舟に乗せたまま田畑へ運んだだろうと思われる。

この地図の道路を見ると興味深いことがある。

川越から平方の渡し(開平橋)経由で上尾方面へ向かう重要な街道が、現在の灰俵沼の東岸を通っているのだ。

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現在は上尾方面へ向かう街道は北に付け替えられているので、明治の地図にある旧道は見る影もないが、道はわずかに残っている。

灰俵沼(古川)を渡る橋は「川越市道3478号線第83号橋」として現在も存在している。ただし欄干が単管で作られたチープな橋になっている。

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橋から見た沼の風景。

雑木は増えているが、川面の景観は明治時代、江戸時代とあまり変わっていないかもしれない。

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橋を渡ったところに釣り人用の駐車可能スペースが3~4台分ある。

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駐車スペースから沼へ入る踏み分け道に道しるべのようなものが立っている。

この細い道がおそらく昔の上尾街道だったのだろう。

いまではちょっと想像もしにくいが。

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灰俵沼の東岸は篠竹に覆われていて沼は見えない。

ただし所々に釣り台へ行くための道が切り開かれている。

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篠竹の藪を入っていくと湖面に出られる。

ここは釣り台が壊れてしまっているので、自分で可搬式の釣り台を持ってこなければならないね。

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別の水辺。こちらはちゃんと釣り台がある。

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しかもボートが係留されている。

釣りのためではなく緊急用だろう。

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放置された樹が水面に伸びている。野趣あふれる釣り場だ。

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さらに岸辺を歩いてみる。

ここもたぶん昔の街道の跡だ。

私は釣りを趣味にしたことはなかったが、小学生のころカブトムシなどを捕りに、こんな道を自転車で走ったなぁ・・・。

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釣り台はたくさんある。

駐車場の台数からすれば、釣り台がいっぱいになることはなさそう。

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ここは桟橋のような立派な釣り場だ。

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続いて、沼の西岸へ行ってみよう。

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西岸も藪が多いが、やや開けている。

岸辺に踏み分け道がある。

完全に藪になってしまわないのは、人が踏んでいるからなのか、それとも年に1度や2度は草刈りをしているからだろうか。

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夕なぎで湖面が水鏡になっていた。

人が整えた庭園とは違って荒々しい美しさの沼だ。こういう人をはばむ場所が身近にあるというのはいいな。

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沼の北側、県道の橋に来てみた。

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橋の上から見た南側の水面。

このあたりは釣り場がない。

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橋の上から見た北側の水面。

(2022年11月06日訪問)