広野から県道20号線を選び、鮎喰川の先行谷を分け入っていく。しばらく行くと、県道から見下ろす河原に小さな流れ橋があるのが見える。駒坂橋だ。
この橋は対岸にある四方蓋造りのかわいらしい2戸の農家を背景としていて、鮎喰川流域で最もフォトジェニックな流れ橋と言っていいと思う。
流れ橋とは川が増水すると橋桁が流されることで橋が壊れるのを防ぐ仕組みの橋である。橋桁はケーブルで岸につないであるので水が引いたら再利用できる。
これは2009年8月9日の様子。
鮎喰川が増水したときと平時との見比べていただきたい。これは決して地球温暖化の影響による災害という
さて、駒坂橋は実は四国巡礼の
上手くすれば白装束のお遍路さんがこの橋を渡っている姿を見ることができるかもしれない。
私はまだ一度も見たことがないけれどね。
霊場第12番焼山寺は四国巡礼の序盤の難所だ。登りの11番→12番も大変な山道なのだが、第12→13番は下山と思いきや、途中山を登り返す箇所もあり、13番への道のりも容易ではない。
昼なお暗い山道を歩いて、県道20号線まで降りてきたお遍路さんはほっとすることだろう。
ところがせっかく広い県道に出たかと思うと、遍路道はなぜか鮎喰川の右岸の細い道へ入っていく。地図の矢印の区間だ。鮎喰川が大きく蛇行する場所なので、右岸を通れば最短距離になるということなのだろう。
このルートは、現時点のGoogleMapsでは道がまったく描かれていないが、歩いていれば先達が付けた札などを目印に辿ることができる。
昔の道って、とりあえず最短距離で目的地に向かうように造られていることがある。昔の人はみな健脚で高低差をあまり気にかけなかったのだろうか。
焼山寺から下ってきた現代の歩き遍路の中には、足に来ていてこの山越えをせずに県道を歩く人も多いのではないだろうか。
それと、なにせ手すりもなく歩けば揺れるような橋だから水量が多いときに渡るのはオススメできない。疲れていればなおさらだ。
歩き遍路は金剛杖という歩行補助の杖を持っているけれど、橋の上では杖を突いてはならないというルールがあるので安定が悪いのだ。橋の上で杖を突いてはいけない理由は、弘法大師がいまも四国霊場を巡っていて、橋の下で野宿しているかもしれないからである。
橋長は約35m、幅員は90cmほど。
安全性などはまったく考えられていない、すがすがしいまでの流れ橋である。
橋桁はケーブルで結ばれている。
反対側は岸辺のけっこう高い位置に結束されている。
あのくらいまで水かさが増えることがあるのだろう。
ケーブルの結束点。
(2007年03月03日訪問)
福岡県歴史散歩 (アクロス福岡文化誌)
単行本 – 2016/3/25
アクロス福岡 (著), アクロス福岡文化誌編纂委員会 (著)
amazon.co.jp