上岡馬頭観音堂。
群馬県東毛地域と狭山・八王子方面をつなぐ昔ながらの街道、国道407号線。東松山と熊谷の間に上岡という地区があり、国道に面して大きなお堂があるので気になっていたがこれまで一度もお参りしたことがなかった。
きょうは2月19日。このお堂の例祭「絵馬市」の日だ。
大きな幟が立ち、平日ではあるが村祭りの高揚した空気があたりを包んでいた。
普段はお寺の境内に駐車できるが今日は祭礼のため近郊の会社が駐車場を開放している。
そちらに駐車して寺まで歩く。
途中の空き地に仮設の馬場が出来ていて、ポニーの触れ合いコーナーになっていた。
上岡馬頭観音の例祭は馬の祭りなのだ。
むかしは農村では農耕馬は重要な財産であり労働力だった。この例祭はその農耕馬の守り神の祭りであり、多くの農家の信仰を集め繁栄した。現代では競馬関係者、馬主などが参拝するという。
私の住む群馬県の農村にも暮らしと密接な祭りがあり、特に春祭りでは養蚕の道具や桑苗を売る市が立つとされる祭りもある。でも実際に行ってみると、もう蚕具などは売っておらずまったく当時の雰囲気は感じられない。
だが上岡馬頭観音の例祭は、現在もしっかり馬の祭りの雰囲気が感じられるのだ。
境内へ。
まず観音堂へお参りしよう。
観音堂には様々な形の馬の奉納品が並べてあった。
内陣は幕で覆われていた。暖房の関係とは思うが、ビニールシートでよく見えない。密教風と言っていいのか・・・。
大きな馬の絵馬があった。
もしかしたら本物の馬の毛で出来ているのかも。
境内の左半分では絵馬やダルマの縁起物が売られている。
こちらが絵馬市の名の由来ともいえる絵馬の売場。
サイズは6寸/18cm(小)が3,000円、2尺/60cm(大)が12,000円。
絵馬というと現在ではほとんどがスクリーン印刷だと思うが、こちらの絵馬は1点1点すべて手描き。3,000円といっても決して高くはない。
興味深いのは馬以外の絵馬もあること。
いま農村では馬はいなくなったが、酪農や養豚に関わっている人は多い。そうした農家のために牛やブタの絵馬が充実しているのだ。
牛もホルスタインとジャージー(?)、黒毛和牛が選べる。酪農家や養豚家が家畜の健康を祈って購入するのだろう。
左側にあるのはトラクターの絵馬!
トラクターは農家にとってはかつての農耕馬と同じで財産であり、安全を祈願するものだ。
小型管理機の絵馬もある!
見た感じ、畝間に入って土寄せをするタイプみたいで、ネギ栽培が盛んな北埼玉では必需品の機械。
つまりここで売られているのは単なるお土産の民芸品ではなく、職業としての農家の切実な願いが描かれた絵馬なのだ。すばらしい。
笹やニンジンが売られている。
神厩に本物の馬がいて、買った笹を食べさせることができる。
リアルな馬の銅像の馬頭観音像もある。
続いて、境内の右側。
境内の入口には水盤舎。
その先には上岡三十三観音というミニ霊場がある。
その奥には厩舎がある。
厩舎は常設で、例祭やイベント際にはここにも馬が入れられる。
こちらも近くで見学できる。
馬を近距離で見ることってあまりないので、けっこうな迫力。
厩舎の前にはパドックがありここも常設。
馬の受け入れ態勢が整った寺なのだ。
観音堂を横から。
千鳥破風や唐破風向拝という江戸趣味の建物だが、軒が美しいなかなかの名建築。
本堂の裏側に古い絵馬が置かれていた。
本堂の裏は公園になっていて少しだけ遊具がある。
当サイトでカモメ雲梯と呼んでいる遊具。
観音堂の裏側は物流会社の倉庫とトラック置場なのだが、この日は露店が並ぶ。
平日だけどこれじゃ仕事にならないから、物流会社は臨時休業なのかな。
売っているのは小間物や乾物など。まさに昔ながらの市だ。
手前は、干し椎茸屋さん。
生姜、ドライフルーツなどを扱う乾物屋さん。
農具や刃物を扱うお店。
鰹節や昆布、漬物屋さん。
「川えび、わかめ」という暖簾が見える。
平日ということもあってか大人向けの露店が多かった。
ヒューム管が置かれてる。
ドラえもんの世界の中じゃなく現実にも置かれてることがあるんだ・・・。
(2025年02月19日訪問)
