吉井川をさかのぼり、JR山陽本線の通る地域へとやってきた。このあたりでは以前に閑谷学校など、いくつかのスポットを見たのだが、見そこねていた神社があったため寄っていくことにしたのだ。
その道すがら、車窓から気になるものが見えた。
近くまで行ってみると、それは粉体加工の工場と思われた。
会社名は東洋白土株式会社。調べてみると、東証二部上場企業の丸尾カルシウム株式会社が昭和34年に設立した子会社だった。
工場は吉永駅に接しており、比較的市街地でもあることから道路が近く、公道からその様子をよく観察できた。
工場の南には平屋の鉱石乾燥小屋が並んでいる。
鉱石乾燥小屋はこの近所で以前に山陽クレー工業の施設を紹介している。工業製品としての鉱石の粉体を自然乾燥するための設備である。
入口のあたりの乾燥小屋は、使われている様子はなく、雑草に覆われ始めていた。
工場の操業規模は最盛期より縮小しているのだろう。
この蚕棚みたいなものが、乾燥用のパレットだ。
建物の内部空間をこのような小さなパレットがびっしりと満たしているのが、鉱石乾燥小屋の特徴である。
工場の東側の道。
こちらには三階建ての乾燥小屋があった。
木造三階というだけでも迫力があるのだが、それに加え各階を埋め尽くすパレットの情報量がすさまじい。まさに機能美の権化とも言える建築物だ。
二階になぜか開口部があった。
もっとも、開口という意味では二階、三階は完全に壁のない吹き放ちの構造だ。
建物の全景はまるでノアの方舟のよう。
道からパレットを観察できる場所があった。
これはたぶん炭酸カルシウムではないかと思う。
風で多少飛んでも、近隣住民に健康被害などの心配がない鉱物だからだ。
工場の北側の道に出てみた。
ここも公道である。
こちらも巨大な三階木造建築。
道路から見えた貯蔵設備のようなもの。
事務所と思われる建物。
この事務所の前には、鉄骨造ながら五階建ての乾燥小屋がある。
まるで城郭の天守閣のごとき神々しさ。
夢にでてきそうな素晴らしい建築だ。
あらためて工場の全景を眺めてみる。
三階の乾燥小屋の側面にはエレベータと思われるものが見えた。
この工場は2007年に創業を停止し、現在は取り壊されている。
(2003年04月28日訪問)
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