アランタヤパゴダ・鞘塔群

寺域の中心部には無数の鞘塔が並ぶ。

(ミャンマーモン州タトン)

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土曜日、私は朝からモン州のタトン方面へとオートバイを走らせていた。目的地はタトン近郊にある巨大寺院、アランタヤパゴダである。

この寺院はAH1号線(国道8号線)に面しているのだが、目印になるような山門もないため、ぼんやり車窓を眺めていたら気付かずに通り過ぎてしまうだろう。左写真がその入口である。(境内図①地点)

だが GoogleMaps の航空写真を見ると、その規模は怖いほど大規模なのだ。

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いったいこの巨大さはなんなのだ・・・。境内の主要部分は東西3km、南北2kmもあり、そこに巨大な建物が整然と並んでいる。初めて写真を見たとき「これは陸軍のキャンプか? パゴダは軍の付属施設?」と思ったほどだ。

職場のスタッフにその質問をぶつけても、となりの州のことなのでよくわからないらしく、パゴダの名前すら知ることはできなかった。

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GoogleMapsによれば、この地は Kathapa-Anauk (カタパ・アノー)と表記されているが、それは地名であって寺の名前ではなさそうだ。調べるうちに、モン州のカリスマ僧侶、アランタヤー(Alantaya)僧正(1941-95)がタトンに巨大なパゴダを建設したということを知り、この寺以外にはありえないだろうという判断から、この寺をアランタヤパゴダと呼ぶことにした。

とりあえず、軍の施設ではないということはわかったので、訪問してみることにしたのである。この寺はあまりに広大で建物も多いため、立ち寄った順番に3ページにわけて紹介する。

  • 1ページ目(本ページ)は、国道からの入口①から④まで、中心となる仏塔や鞘塔(さやとう)群を紹介する。
  • 2ページ目は、⑤から⑧まで、タトン山脈の尾根に連なる山上伽藍部分を紹介する。
  • 3ページ目は、⑨から⑫まで、仏殿や講堂、僧院の様子を紹介する。

もちろん、それだけのページ数を使っても、この寺の全容を伝えることはむずかしそうだ。なにしろ無数にある建物のひとつひとつが、これまで1ページで紹介してきた寺院1軒に相当する規模なのである。

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参道を進むと、パゴダの手前に広々とした空き地があり、そこにいくつもの層塔の建物が見えてきた。(境内図②地点)

ひとつひとつがとても大きい。

そして、この巨大さ、広大さに対して、道を歩いている人がほとんどいないのが不気味だ。

道の片側にある建物を順番に訪問してみたが、無人で、建物の戸はいずれも施錠されていた。

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それでも戸板の隙間から覗いてみると、これらの建物はパゴダの覆屋(おおいや)であることが確認できた。このように覆屋が層塔状で内部にパゴダが収まっている建物を、当サイトでは「鞘塔(さやとう)」と呼んでいる。造語である。

これまでカレン州で100以上の寺を見てきたが、鞘塔はアゥントームパゴダ1ヶ寺で確認しただけであった。それがここだけで4棟もある。

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その鞘塔群のうち、もっとも巨大な建物は入口が開いていたので、入ってみることにした。

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内部はパゴダを中心とした大空間だった。

これが鞘塔の典型的な構成である。

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仏陀の光背に丸いプラ板が円弧状に並んでいるが、プラ板1枚が並の仏像用の電飾光背なのだ。つまり、この仏像は大仏にカテゴライズされる大きさ。

建物のスケール感もすごい。鉄筋コンクリートの柱は、木材のヌキで固められた頼りないラーメン構造。その違和感というか頼りなさは、日本の木造建築の天竺様式を思い起こさせる。

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柱の下部は金色のペンキで塗られているが、いままさに僧侶たちがペイントしているところだった。

足場も細いし、怖いなあ・・・。

そして人のスケールから、この建物がかなり大きなものであることがわかると思う。

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続いて、この寺のメインとなる巨大パゴダへと向かおう。(境内図③地点)

といっても、境内は広いので歩いて移動することは考えられない。建物から建物へとオートバイで移動することになる。

パゴダは正方形の塀に囲まれた敷地にあり、東西南北に山門がある。

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山門からは回廊がパゴダまで延びていて、その先にはパゴダ拝殿がある。「パゴダ拝殿」も当サイトの造語で、パゴダに密着して建てられた礼拝用の建物のことだ。

このように山門→回廊→パゴダ拝殿と連結していると、参拝者は山門に入ったあとは室内空間に取り込まれ、パゴダの全景を見ることはない。せっかく立派なパゴダを造っているのに、もったいないシステムだ。

回廊は一般的には、間口1間で柱と屋根だけの吹き放ちの場合が多いのだが、この回廊は間口が3間あり、しかも壁があるため内部は薄暗い。

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両側の1間分は床がある。

おそらく将来はここに仏像を陳列するプランなのだろう。

壁にはどういうわけか獣姦の落書きがさまざま描かれていた。ヤギみたいな動物を犯している絵と、犯されている絵もある。

ストイックな修行僧にはこれがエロなのか・・・?

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回廊の途中を道路が横切っていて、壁がない場所があったので、そこからいったん外に出てみた。

せっかくだからパゴダの外観も見ておきたかったからだ。巨大なパゴダで、直径は120mくらいはある。

全体的なシルエットはヤンゴンのシュエダゴンパゴダに似ているが、基壇が単純な八角形だったり、周囲を取巻く小塔が少なかったりと、やや大味だ。

右手前の茶色い屋根の建物がパゴダ拝殿である。

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パゴダのある正方形の敷地内にも、沢山の建物が並んでいる。

これらひとつひとつに仏像が収められているはずだが、いちいち参拝していたら、時間がいくらかかるかわからない。時間もさることならが、いくら寺好きな私でも、この寺のすべての堂と塔を確認したら、精神が壊れると思う・・・。

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パゴダ拝殿に戻ってきた。これがその内部。

天幕に赤と黄色の太陽のようなアイコンが描かれている。太陽と月を表わすものだと思われ、この寺では頻繁に目にすることになる。

それにしても人がいないな・・・。

これだけの規模のパゴダなら、参拝客の一人くらいいてもよさそうなのに。

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パゴダ拝殿の本尊。

こじんまりとした像だ。

この壁の後ろに巨大なパゴダがあるのだが、ここからはまったくそれが見えない。

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本尊の左側には神馬。

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本尊の左側には神象。

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パゴダの敷地の外側は、塀にかこまれていてまるで要塞のようだ。

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パゴダの南側に数軒の露店が出ていた。

果物や飲み物、簡単な食事、Tシャツなどの衣料を売っていた。寺の参拝者向けの土産物屋ではなく、村人を相手にした店かもしれない。

この寺全体で、お店らしきものはここだけであった。

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この寺の周囲は、碁盤の目のように整然とした道が作られていて、村を形成している。航空写真をみるとそれはまるで条里制の都市のようでもある。

アランタヤ僧正がこのパゴダを建てたとき、建設に協力するために集まった信者たちの村なのであろう。

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パゴダの南側を東西に走る参道の両側には、中規模の鞘塔が並んでいる。(境内図④地点)

たぶんすべての覆屋の内部にパゴダがあるはずだ。

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入れそうな鞘塔があったので、確認のため入ってみることにした。日本の寺院でいえば塔頭(たっちゅう)のような感じだ。

山門→回廊→鞘塔と連結している。

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回廊の中。

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鞘塔の内部。

案の定、パゴダがあった。

このパゴダ、基壇が円形というのがめずらしい。

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鞘塔の周囲。

こんなふうに「これでもか」というくらいにお堂があるのだ。

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東西の参道を東へ向かって走る。お坊さんたちも、あまりに広すぎる境内を自転車で移動していた。

次の目標は、寺の東にある山脈。その尾根に見えるパゴダ群だ。

つづく・・・

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(2015年11月28日訪問)

D24 地球の歩き方 ミャンマー(ビルマ) 2020~2021 (地球の歩き方D アジア)

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地球の歩き方編集室 (編集)

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