きょうの目的地、ザタピンから南東に見えた山、それが近くなってきた。
先ほど立ち寄ったタラナ村を出て、2つの小さな村を過ぎたところで山容がくっきりと見える広々とした田園に出た。
そこには目を見張るような壮大な寺院空間が広がっていた。左の小山には仏堂がごちゃごちゃと貼り付き、正面に見える山脈にはいくつもの黄金のパゴダが山頂で輝いている。
ザタピン町から見たときは、直線距離5kmくらいのところにある小山だと思ったそれは、実は直線距離10kmも先にあった巨大な山塊だったのだ。標高は300~400mくらいあるだろう。
左の小山は、山としては小さいがそこに立てられているお寺の堂の付き方がすごい。
黄金に塗られた仏塔、色鮮やかな屋根、城か要塞かと思うくらいにびっしりと立てられた仏堂。
これこそがミャンマーのお寺の“風情"なのである。見れば見るほどにうっとりしてしまう。
お寺の入口についた。
派手なお寺のわりに山門は質素だ。
山門に書かれた文字は、例によってモン語。モン族の人に音読してもらったら「タンマサーバージョ」と書いてあるらしい。
GoogleMapsをみるとこの村の英語表記は"Dhammasa"とあるので「ダンマサ」か。また他の機会で私が耳で聞いた音は「トムサ」のようにもとれた。
だが併記のビルマ語は(小さくて判読が難しいが)"သှေဟ်ကွီဓမ္မသ"のように見える。日本語で書くなら「タンマサー」でよさそうに思えるので、「タンマサー僧院」としておく。
境内に入ると、にぎやかな声がしてくる。
建築中に見える僧房で、子どもたちが授業をしているようだ。
ミャンマーでは、義務教育のほかに寺が学校の代わりを果たしており田舎であっても無償で教育を受けることができるのだ。そのため貧しい国といわれながら、識字率は90%を超えるという。
山門を入ったところには大きな貯水池。
階段井戸と言いたいところだが、微妙。
さらに境内の奥に進むと立派な僧房があった。
修行僧はこちらで暮らしているのだろう。
その僧房の前にはステージがある。
地面に数字がかかれているのは、ここで芝居やライブをやるときの座席番号ではないかと思う。
カラウェイ船の形をしたパゴダ。
船の上には4つの仏塔が並んでいる。
境内の奥はジャイン川に面していて、船着き場があった。
この寺も船で訪れることができそうだ。
川岸にあった祭祀場。
仏教なのか精霊信仰(ナッ)なのかははっきりしない。
だが、紅白の布は神様を祀った場所という話もきいたので、精霊信仰のような気がする。
水際にあるというのは、以前にサダンケーブで見た放生供養の祭祀を思わせる。
境内をひと回りして、いよいよ小山の山頂へ向かう。
この階段の登り鼻でサンダルを脱いでゆけばよいだろう。
きょうは薄曇りで多少過ごしやすいとはいえ、はやり暑季である。気温は30℃を越えているであろう。
小さな山とはいえ、気楽に駆け上がれるものではない。少し登るだけで全身から汗が噴き出す。
階段は相変わらず急で、踊り場が少ない。転がり落ちたら命にかかわる。
だが屋根があるので足が焼けないのがウレシイ。
階段の途中にはお堂がいくつかある。
階段は折れ曲がりながら山頂へと続く。
山頂はとてもせまく、ほぼ階段の幅しかない小さな尾根になっている。
こんな小さな地形に屋根付き階段を付けてしまうのには感心する。
山頂はパゴダ拝殿になっていて、四体の仏像があった。
パゴダ拝殿は横から外に出られるようになっていて、背後の仏塔に取りつくことができる。
仏塔にはさらに小さな階段状のものがありその気になれば登れそうだったが、やめておいた。
これは上流方向の景色。
見える範囲ではパゴダや小山はなさそうだ。
南側を見てみよう。
階段の途中から南側へ行く通路がある。
通路はきれいに掃いてないので、足の裏が痛い。
通路の先には仏塔がある。近くで見るとけっこう雑な造りだ。
だがこの場所から眺めるタンマサー村は絶景だ。背後の山並みは近くにあるのにスケール感があり、まるで箱庭を見ているよう。
この寺はモーラミャインを訪れる一般の旅行者が観光で来てもいいのではないかと思う。
(2015年04月26日訪問)
インパール (文春文庫 た 2-11)
文庫 – 2018/7/10
高木 俊朗 (著)
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