名取市那智三社巡りの最後にして、本日最後の訪問地となる那智神社は、名取市の西部の高舘山の山頂付近にある。
高舘山への入口には那智神社の里宮かと思われるような辻堂がある。堂は追分に建っており、右に行けば高舘山、左を行けば村田町へと至る。
現在は県道の付け替えで目立たない位置になってしまったが、かつては仙台方面から来るとこの鳥居の前で道がかぎの手になっていたため、とてもインパクトのある風景だったに違いない。
建物はは熊野神社と同様に春日造。境内の両側がすぐ道路なので少し窮屈だが、やはり追分の辻堂というのはいいものだ。
さて、これから向かう那智神社は、この旅の初日に登り口を探してだいぶ苦労した神社でもある。このページ右上の地図からリンクしている Google Maps を見るとなんのことはない、団地から登れるのだが。この当時にはその道がなく道路地図には徒歩用の登山道しか載っておらず、車ごと登山道にはまりそうになったりと散々だった。
実は車の参道は、辻堂の右の道を進み、突き当たりの石灰の採石工場の入口にあったのだ。初日は暗くなっていたので、採石工場の手前で引き返してしまっていた。どう考えてもそこから先は工場の敷地だと思えたからだ。だが、他の可能性をあたってみて、もはや採石工場の中へ入ってみるしかないという結論に達し、ようやく道を見つけることが出来た。山頂までの道は荒れていて、車高の低い車は苦しいだろう。
かつては徒歩で参詣したのだろうか。途中には石段が続いていた。
しばらく進むとカラマツ(?)の林の中に観音堂があった。
本坊から離れた林の中に堂がぽつりと建っているあたり、いかにも山岳霊場という雰囲気だ。
林道のような道をどうにか進んでやっとのことで、山上の中心伽藍に到達。車で登ると庫裏の裏手に着く。よって裏口からの参詣となってしまう。
正面から参詣したいのなら、少し手前で上写真の石段を徒歩で登ればよい。
社殿は、拝殿、本殿、社務所。拝殿(写真)高欄を巡らした寄棟造の風変わりな建物だ。現在は銅版葺きだがかつては茅葺きであったろうと思われ、かなり仏教色の強い建物だと言えるだろう。
本殿は春日造。
拝殿の前には五間の割拝殿。この種の割拝殿は以前に兵庫県の生石神社でも紹介している。
一般的な拝殿というよりは舞台のようなものであり、割拝殿という呼称とは区別したほうがよいのかも知れない。
舞台部分からは名取市が一望できる。
割拝殿の中央一間には階段があり、石段の参道へと続いている。
下から見たところ。
この割拝殿の特徴は、中央の通路の階段が木造であること。そして、舞台の床下に桟敷のような構造が見られることだ。
拝殿の左側には鐘堂がある。神仏混交の時代を物語る物件だ。
鐘堂の右側には下りの石段が続いていた。参道の石段とは逆方向、すなわち、本殿の背後へ下っていく石段である。
地図をみると那智神社の裏山あたりに「那智滝」という標記があったので、下ってみることにした。
こうやって写真で増感してみると明るそうだが、時刻は夕方の6時近い。森の中は薄暗く、どこまでも続くように見える石段を降りてゆくのは勇気がいる。
5分ほどで石段を降りきると、湿っぽい林の中に廃屋があった。
かつての神社の籠り屋だったかもしれない。
その奥に、
四阿は滝で修行をするときの脱衣所として使われそうだ。
これが那智の滝。落差は全体で5mくらいか。
本家の那智滝が日本有数の滝なだけに、しょぼさが際立つ。
同じ石段を登って境内に戻ると、名取の市街地にはまだ残照があった。
名取の那智三社の立地が和歌山の那智三山と似た印象を与えるのは、ここから見える名取の平野を熊野灘に見立てることができるからだ。
こうして3日間仙台一周の旅は終わったのだった。と同時に、2000年の10月から1年間続いた私の東北ブームもいったん終わることになる。もちろん岩手県だけをとってみてもまだまだ行くべきところはあるという認識なのだが、それはまたずいぶん後の機会になるだろう。
東北旅行の帰りにはいつも高速道で居眠り運転をしそうになっていたので、今回は東北自動車道を使わず、一般道だけを使って都心まで戻ることにした。何度か通ったことのある国道4号と国道6号を避け、あえてその中間にある国道349号を選んで帰路につく。見慣れぬ夜の街の風景と、道標に書かれた聞き覚えのない地名に心細さがつのるのを少しだけ楽しみながら‥‥。
(2001年09月24日訪問)
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