善宝寺

かつては人面魚で一躍有名に。境内の五百羅漢堂をチェック!

(山形県鶴岡市下川)

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旅の道程はいよいよ山形県に入った。最初の訪問地は鶴岡市郊外の善宝寺だ。

ここを訪れるのは1991年以来2度目。

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曹洞宗に属し、愛知県の豊川稲荷、小田原の大雄山ともに曹洞宗の3大祈祷寺と言われている。

日本海に面した小さな山脈の東麓にある境内は広大で、堂宇は、総門、二重門、水盤舎、五重塔、本堂、秋葉堂、選仏堂、龍王堂、五百羅漢堂、竜華堂、書院、庫裏、衆寮など膨大。また、門前には数軒の茶店がならぶ。

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二重門は唐破風や千鳥破風を重ねたごてごてした意匠。

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見上げると衆寮。

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さて、今回この寺を再訪したのには理由がある。

この寺には五百羅漢堂という堂宇があり、その中を見たかったからなのだ。前回訪れたときは堂の扉が閉じていてまったく中の様子がわからなかった。

なんと今回は堂が開いている。再訪してよかった~

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私が五百羅漢堂にこだわるのは、巡礼堂の可能性があるからだ。

一般的な仏堂は、堂ごとに本尊が中心に置かれそれに正対して礼拝する。

それに対して巡礼堂では、建物の中に順路が作られ、参拝者はその順路を歩きながら複数の仏像を拝む。

すでに紹介したさざえ堂や、かつてあった本所の羅漢寺が巡礼堂の例である。

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で、このお寺の五百羅漢堂がどうだったかというと、残念ながら巡礼堂ではなかった。

参拝者が自発的にルート取りをして仏像を巡拝するというもので、手すりなどで順路を強制するものではないからだ。

こうしたものを集合型の五百羅漢堂とでも呼ぼうと思う。

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さざえ堂や巡礼型の五百羅漢堂が国内のどこにあるかは、だいたいが知られている。

それでも、もしかしたら知られていない巡礼堂がどこかにあるのではないかという淡い期待を、私はまだ捨てられずにいる。

今回の旅でも百観音、五百羅漢というキーワードで目的地を選んだ。

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でもこの寺の五百羅漢堂は巡礼型でなかったとしても、この寺の五百羅漢は目を見張るすばらしいものだ。

極彩色が施され、保存状況は良好。

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写真ではちょっと分かりにくいが、長押(なげし)部分にまで羅漢が取り付けられている。

こんな場所の羅漢をどうやって拝観すればよいというのだ?

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これはもしかしたら傅大士かな?

かつて経蔵に祀られていたのが、何らかの理由で五百羅漢堂に移されたのではないだろうか。

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善宝寺は堂宇が無数にある大寺だが、個人的にあまり感動がないのは、全体的に江戸趣味な建物が多いため。

微細な彫刻をちりばめることだけに力点を置き、建物全体のバランスに対して無頓着としか思えないのが江戸期の仏教建築なのだ。

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寺の伽藍は3つのレベルに分かれて配置されている。

総門、山門、羅漢堂は街道と同じレベルにあり、本堂や衆寮は石段を登った2つ目のレベルに建てられている。

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本堂は好感を持てる比較的質素な寄棟造の建物である。

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本堂の右手には祈祷受付があり、「次の祈祷は○○時から」という巨大な電光掲示板がタイムスケジュール常時表示している。

さすが3大祈祷寺。

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本堂の左側には位牌堂。

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位牌堂の内部。

何の根拠もないんだけれど、五百羅漢はもともとここに祀られていたんじゃないかというような気もする。

本堂との位置関係において、五百羅漢堂はここにあるのが自然な配置に思えるからだ。

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位牌堂の左側には座禅堂。

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本堂の裏手は3つめのレベルになっていて、龍王伝という本殿的な建物がある。

1棟の入母屋の建物に2つの唐破風向拝がついているという不思議な造り。二間社の神道建築っぽい感じがする。

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本堂のレベルから境内を見渡したところ。

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五百羅漢堂の左側にあった三十三観音堂。

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そのさらに左側にあった竜華庵という建物。

もしかすると塔頭かもしれない。

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善宝寺の門前には、廃駅が博物館として展示されている。昭和50年に廃止された庄内鉄道湯野浜線の遺構である。湯野浜線は舞鶴から善宝寺を経て、湯野浜温泉へと向かう観光路線であった。

最後にもう一つ、善宝寺を語るときに忘れてはならないのが「人面魚」である。今から十年以上昔、人面犬という妖怪ブームがあり、それに便乗して全国にさまざまな「人面○○」が出現した。その中でも比較的メジャーになった「人面魚」はこの寺の池に生息していた。私にはあの鯉のどこが“人面"なのか理解できなかったが、とにかくその当時はなんでも人面に見えていた時代なのだ。

1991年に訪れたときには、人面魚テレカ、人面魚キーホルダーなどさまざまなグッズがこれでもかというほど売られていた。今回門前のみやげもの屋をのぞいてみたが、そのことを偲ぶことのできるグッズは一切見当たらなかった。

(1999年08月23日訪問)

図解/古建築入門: 日本建築はどう造られているか

単行本 – 1990/11/1
西 和夫 (著)

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寺院建築の架構が最も理解しやすく書かれている本だと思います。