
東京方面に遊びに行った帰りに国道17号線を通った。戸田橋で荒川を渡ると埼玉県に入る。その戸田橋からすぐ西側に戸田公園という園地があるので、夜になっていたが立ち寄ってみた。
公園からは荒川の土手がすぐ近くなので、土手に上って夜の荒川を眺める。

土手から見た川の対岸は板橋区。工業専用地区だが、斎場があって葬儀で行ったこともある地域だ。その喧騒から川ひとつ挟んだ戸田公園は静寂そのもの。
たまにジョギングをする人が通るだけの静かな住宅地だ。

埼玉県の荒川についてこれから紹介していくが、たぶん最下流のスポットとなるのがここ戸田公園だろう。
ここには戸田競漕場という長さ2.5kmにおよぶ池がある。西側は競艇場、東側はレガッタのコースとして大学の練習コースとして使われている。

これがレガッタのコースの東端。ボートを入れる桟橋がある。この池はオリンピックのボート競技のために作られた、日本のボート競技の聖地ともいえる場所。でも特に柵などはなく自由に水辺まで近づける。
すぐ横が荒川で、笹目川もあるのだが取水はしておらず、水源はすべて湧水だという。

池の両側には各大学のレガッタ部の宿舎が建ち並ぶ。

部員たちはこの宿舎に寝泊まりして、日々研鑽を積んでいるのだ。なんというストイックな大学生活!
クラブにも入らず、何となく4年間を過ごしてしまった自分とは大違いだ。

実はむかしこの水辺をある人と歩いたことがある。
私のほうが一方的に好意を持っていた女性なのだが、望めば用事の合間の時間に、彼女のホームタウンを散歩してくれるような関係だった。

もっともただそれだけで、私は常に彼女の人生の蚊帳の外の存在なのだった。どうしたら同じ場所で、同じものを見て、同じ時間をすごせるのかはわからずじまい。
それは私があのころ大学で体育クラブに入って練習の毎日を送らなかったように、交差することのない道だったのだろうと思う。

この場所にはそんな思い出が、止まった時間の中に残り続けている。
そういう場所があるというのはいいものだ。
(2024年09月15日訪問)