新城の稚蚕飼育所

空調大部屋方式、桑養育、箱飼いの飼育所。

(愛媛県西予市宇和町新城)

愛媛蚕種で宇和町に稚蚕飼育所があると教えてもらった。

きょうは大洲→愛媛蚕種→伊方町の亀ヶ池温泉→大洲で宿泊というつもりだったので、宇和町は方向が悪いが、もし飼育所で担当者に会えれば愛媛県の養蚕農家の場所を教えてもらえるかもしれないので、予定を変更して宇和町に向かった。

写真

稚蚕飼育所の場所はすぐにはわからず、道ばたの人に尋ねまわってたどり着くことができた。

写真

外見だけではすぐには稚蚕飼育所だとわからないが、なにせ隣に50アールほどの桑園があるので間違いないだろう。

飼育棟と事務棟がある。

写真

飼育棟は大きな建物で、重量鉄骨造、スレート波板葺き。

正面には2つの扉があり、2室に分かれている。おそらく、左側の扉は飼育室、右側の扉は貯桑場ではないかと思う。

現在、愛媛県で稚蚕飼育をしているのは愛媛蚕種とここだけ。愛媛蚕種は人工飼料育だが、ここは桑園があるので桑養育なのだろう。

写真

扉に消毒の履歴が書かれている。

年1回なのだろうか。私の知る他の飼育所は毎蚕期だから、年1回は少ない気がする。

写真

造られたのは昭和46年。稲作転換で「養蚕団地」というパイロット事業を実施したのだろう。

生糸と繭の輸入自由化は昭和37年で、昭和46年ごろは生糸の輸出が減少し輸入量と逆転しはじめた時代だ。養蚕を大規模化して効率化を進め、なんとか国内の製糸業を存続させようとしていたのだ。

写真

配蚕のスケジュール表を発見。

品種は「あけぼの」がメインで、一部「青熟」。

あけぼのは繭糸の細さが特徴の品種で、普通品種の繭糸の太さが3デニール(30ミクロン)程度なのに対して、あけぼのは2.3デニールほどしかない。繭糸は細いほうが高級品なのだ。

写真

飼育棟にはいっさいの窓がなく、排気用の換気扇がある程度。

写真

中は天井、壁はコンパネで作られている大部屋だった。

天井には空調のダクトが通っている。

稚蚕飼育所の分類でいえば、「大部屋空調式」というタイプ。

写真

蚕座の方式は見たところ「箱飼い」。

この建物ができた昭和46年には一部では機械化蚕座が登場していたが、この飼育所には間に合わなかったようだ。

写真

挫桑機(ざそうき)が並んでいた。

桑の葉を稚蚕用に1~3cmほどに刻む機械だ。

このような折り畳み式の挫桑機は「天竜式」といって、長野県南部で発明されたもの。

写真

ボイラー室。

写真

ボイラーは重油ではなく電気式だったのかな。すごく大げさな電気設備があった。

写真

飼育所の隣りには事務棟があった。

事務棟から飼育所の間が土なので、移動の際に病原を持ち込む可能性があり、飼育所のレイアウトとしてはいまひとつだと思う。

写真

窓からみた事務棟の内部。

写真

消毒槽かな。

いまは使っていないみたいだ。

ということは、この飼育所が大部屋方式になる以前にもここには飼育所があり、蚕箔育で棚飼いをしていたのかもしれない。

写真

挫桑機が朽ち果てていた。

写真

桑詰み籠も朽ち果てていた。

写真

飼育所の北側は桑園になっている。

桑の仕立ては値刈り。機械をつかって刈る「機械桑園」ではなく、一般的な手刈りの桑園だ。

写真

この場所には2012年の3月にも訪れた。

写真

桑の仕立てがよくわかる。

(2011年10月08日訪問)

林業現場人 道具と技 Vol.7 特集 ズバリ架線が分かる 現場技術大図解

単行本(ソフトカバー) – 2012/9/27
全国林業改良普及協会 編 (著)
スパン長100m~1000m超まで、規模の異なる全国の様々な架線現場を取材し、索張りシステムから、仕事の段取り、集材の手順、技術や工夫まで、その特徴を紹介。

amazon.co.jp

索道の敷設や運用について、写真やイラストを多用したわかりやすいムックです。