ミャンマーに滞在して2回目の週末。職場の子たちが遊びに行きたいというので、トラックバスを1日チャーターしてみんなでチャイッカミまで遠出することになった。
チャイッカミはモン州の南部では有名な観光寺院だ。厳密にはチャイッカミは村の名前で、寺はイーレーパヤーというらしい。
伝説によれば、2200年ほどまえにスリランカから4体の仏像が初めてミャンマーに流れ着いたそうで、その1体がこの寺に納められているという。2200年前にすでに仏像があったのかどうかはかなり微妙だとは思うが、とにかくこの地方きっての名刹ということになろう。
建物は水上に建てられており、潮が満ちると海に浮かんだようになる。きょうは残念ながら引き潮で寺の敷地には干潟が目立った。
本堂までは長い渡り廊下が続く。
古い歴史を持つ水上寺院と言葉で書けば、広島県宮島の厳島神社と似ていないこともないのだが、ミャンマーでは寺は老朽化したらすぐに最新の建材を使って補修されてゆくので、渡り廊下もコンクリ製。
平安時代の様式を保ったまま千年近く木造で改修されてきた厳島神社とはだいぶおもむきが違っている。
途中に舟の形をした建物があった。
ここは内部が寄進受付所になっていて、寺の床などに貼るタイルを寄進できる。
寺の一番奥に本堂がある。
本堂への入口。
堂内は女人禁制になっており、外国人にも適用される。
女性陣とわかれて私だけ本堂へ入る。
内陣は巨大な鳥カゴを思わせる檻で、黄金のデコレーションケーキが入っている。
これ、ミャンマーのテレビ番組などで時々見たやつだ。
天井は「折り上げ天井」ふうで、細かい装飾がびっしり。
確信はないが、モン州の建物のスタイルではないかと思う。
デコレーションケーキの正面にまわってみた。
金色の仏像が全方位に向いて並んでいる。紀元前に流れ着いたという仏像はこのデコレーションケーキの地下にあるらしい。
仏像の正面の遥拝スペースは幅が2mくらいしかなくて、跪拝している人がいると通行しにくいほどに狭い。
なんでそんな狭いことになっているかというと、遥拝所のすぐ後ろは壁のない吹き放ちで、その先に女性の遥拝所(女人堂)があるからなのだ。
この寺では女性は本堂に上がることができない。その代わり、本堂のすぐ横に女人堂が建っていて、そこから本尊を拝めるようになっている。
少しでも女性側から見やすいように、本尊は堂の中心ではなく、女人堂側の壁ぎりぎりに寄せて置かれているのである。そのため男性の遥拝スペースが妙に狭くなってしまっているのだ。
本堂の裏のほうへ回ってみると、海中に小さなお堂が浮いていた。
もう少し潮が引いたら歩いてお堂まで行けるのかもしれない。
人々が海をのぞき込んでいる。
魚の群れだ。
ボラだろうか。
餌付けされていて、お寺の回りに群れ集まっているのだ。
餌は麩菓子。
たしか50円だったと思う。
一袋買って私も餌やりをしていると、職場の女性とも合流。麩菓子はけっこう量があるので、全員で餌やりできた。
このお坊さんは、この寺の修行僧ではない。別の寺から来た団体旅行の人たちだ。楽しそうだな。
お坊さんといえどけっこうスマートフォンを持っていて、記念写真に余念がない。
寺から見て沖のほうの風景。チャイッカミは、サルウィン川の河口にできた岬の突端にある。海が茶色に濁っているのは、サルウィン川の水の色のせいだろう。
名刹というわりに、建物も少なくあっけなかった。
引き返すことにする。
途中にあった有料トイレ。利用料は100チャット(8円)。
トイレの建物は海に突き出して建っているので、おそらく便器の下は空中で、排泄物はすべて海面に落下するのではないかと思う。
本堂の手前にあった博物館っぽい建物。
行きにも気になっていたのだが、帰り道で入ってみた。
中は2階吹き抜けで、中央には大きな仏足石が祭られていた。
案内人が、左のほうへ進みなさいと言っている。巡拝路が決まっているようだ。
1階の外周はとっても怪しい感じの仏教説話ジオラマコーナーになっていた。
ジオラマはガラス張りで、水族館のような雰囲気。
この種のジオラマでガラス張りになっているのは初めて見た。柵なしか鉄格子が一般的なのだ。
入浴中の釈迦だろうか、あるいは、釈迦を暗殺しようと煮えたぎった油を注いだが法力でちょうどよいお湯になったとか、そういう説話の場面かもしれない。お賽銭のお札が降りかかっていて、かなりえげつない絵づらになっている。そうか、お賽銭泥棒をされないようにガラス張りなんだな。
ん? でもそれだとどこからお賽銭入れたらいいんだ?
1階をひと回りすると、通路は自然に2階へといざなわれる。
このように、順路が区切られていて、決まったルートを通りながら参詣するような建物や場所を、当サイトでは「巡礼空間」と呼んでいる。
2階には1階を見おろすような通路があるだけだった。
だがよく見ると、不思議な穴がある。
なんと1階のジオラマへお賽銭を投げ入れるための穴だったのだ。
つまりこの建物は仏教説話ジオラマ館でもあり、超巨大な賽銭箱でもあるのだ。
穴からのぞきながら、自分が気に入ったジオラマに賽銭を投げ入れてみた。
ミャンマーには硬貨がなく、すべてが紙幣。奮発して1,000チャットを投入。
ひらひら~。
お寺の本堂よりも、この建物のほうが面白かった。
(2014年11月15日訪問)
いちばんやさしい ブッダの教え
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田上太秀 (監修)
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絵も多く読みやすいです。侮れない内容のオススメの本です。国内だけでなく、上座部仏教の国でお寺を見るときの理解の助けにもなります。