善昌寺の西隣の敷地に地域の霊廟がある。地域の共同墓地が納骨堂の形式になったものである。寺の敷地と接しているとはいえ、おそらく管理は別々であろう。
こうした物件は、今回前橋市の南部を巡ったときに何度も目にしたのだが、あえて「見ないように」してきた。なぜ避けてきたかというと、これに手を付けたらそれだけでサイトひとつ作れるくらいの「やり込み」が可能そうな恐ろしさを感じるからだ。
前橋に暮している人に、こうした霊廟ついて訊ねたら「普通だろ? どこの田舎にもあるよ」と答えるだろう。本当にそうなの? 誰かが確認した? いや、確認しようと意識すること自体がパンドラの箱を開けてしまうような、あるいは、未踏の荒野に道を付ける苦行の始まりを告げてしまいそうな、イヤな予感がしてならないのだ。
納骨堂はこれまでも寺の本堂に接合した位牌堂の形式や、寺の墓地に建てられたものなど、あたりまえのものとしていくつも紹介してきた。
だが、寺から独立して地域で運用されている共同墓地としての納骨堂を紹介するのはこれが初めてになる。
こうした納骨堂は、前橋の南東部の水田地帯には特に濃密に分布しているように感じられる。もちろん、探せば他の市町村にもあるだろが、その分布は均一ではないように思えるのだ。
実は、2004年に山口県を訪ねた旅で「納骨堂形式の共同墓地が多いな」と感じ、写真を撮ったことがある。
そうした分布密度の違いが、地域の文化の差異によるものか、他の要因(たとえば火葬が始まったタイミングとか、墓地の地下水の高さなど)によるものなのか、いずれ解き明かすことができるのだろうか。
前橋市南部の霊廟に関して言えば、RC造で陸屋根の建物に、わずかながら宗教的なモチーフを付加した形式が多そうだ。
この建物は、陸屋根の中央に切妻の棟を持ち上げることで、正面から見たときにはっきりと霊廟であることをアピールできている。
また床面が地面から上げてあることにも注目すべきかも知れない。
霊廟の裏手にはわずかな墓石が並んでいる。
これが何かを意味しているのか、何の意味もないのか、まだなにも言えない。
納骨堂の前には六地蔵がある。
この納骨堂の特徴は、敷地が公園になっているということだろう。
最近珍しくなってしまった遊動円木がまだ現役で残っている。
トイレもある。
地域の人たちが管理しているのだろう。
何はともあれ、納骨堂を紹介してしまった。
これが唯一の記事になるのか、それとも、シリーズものになるのかはまだわからない。
(2015年12月20日訪問)
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