天引川をさらにさかのぼり、最上流の集落「堂ノ入」へ向かった。稚蚕飼育所の場所を特定するために、事前に住宅地図をしらみつぶしにしたときにこのあたりに「磨崖仏」という表記があったので見に来たのだ。
道路を通っていても案内板は見当たらなかったが、磨崖仏のおおよその位置は1/25,000地形図に転記しておいたので、それとおぼしき位置で山の斜面に分け入ってみた。
この地方の磨崖仏といえば、前回の旅で紹介した平石の磨崖仏がある。今回紹介する磨崖仏はその場所から小さな尾根を隔てた東の谷にあたる。
この地域には局所的に磨崖仏のブームでもあったのだろうか。平石の磨崖仏と同じであれば、江戸中期ということになるが。
いくつか崖のくぼみなどを捜して、どうやらそれらしき磨崖仏にたどりついた。
この日は、ピーカンで磨崖仏の撮影には最悪の天候。こんな見にくい写真になってしまった。
近影。
大きさは蓮台から60cmくらい。小さな磨崖仏だが、崖の表面からの掘り込みの深さや立体感はまずまず。
石質はたぶん凝灰岩。
頭部のグレーっぽく見える部分は補修の跡のようだ。なんでこんな変なことをしてしまったのだろう。
近くの崖には、地元の人が奉納したと思われる石仏もあった。
不思議な形状の石仏もあった。
おそらく薬師如来だと思うが、頚が胴体にめりこんだようになっているし、薬壺を持つ手の形状もやけに稚拙だ。
これも地元の人の奉納仏だろうか。
双体道祖神らしきものもあった。
近くで見かけた養蚕農家。蚕室は2階の廻り縁が桁梁の両方向にせり出したような作りになっている。南牧村などの平地の少ない山村の養蚕農家でよく見かける作りだ。
この堂ノ入を含めて、鏑川南岸の山中の小さな集落は、独特の寒村の雰囲気があって私のお気に入りの場所だ。今回の旅では、稚蚕飼育所に関係なく、谷の行き止まりにある字を1つ残らず見て回った。別項で紹介でするつもりだ。
(2008年12月28日訪問)
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