上毛電鉄新里駅の南側に南北300mほどの長さの舌状の丘陵がある。ここはもともと石切り場だったのを昭和46年に造成しようとしたところ、大量の貝化石が発見されたという場所。化石の年代は1,500万年前のものだという。
駅からも近いので、中学時代に何度か友だちと化石掘りに来たことがある。時には自転車を遠乗りして来たこともあった。知らなければただの造成地にしか見えない場所で、実際に、貝や葉(藻?)の化石があきれるくらい採れた。

化石というだけで本来は珍しいものなのに、あまりにたくさんあると目移りしてしまう。そもそも中学生にとってはハマグリみたいなものはたいして面白くも感じられず、ホタテ貝の完全な形のものがないか、とか、魚の化石がないかなどと探し回ったのを覚えている。
それでも遊びのうちに、内陸の群馬県が太古に海の底だったということを実感することができる、生きた教材だったと思う。
桐生方面から前橋に戻る途中、その造成地がどうなったのか気になって、ん十年ぶりに訪れてみた。
きっと、ありふれたの新興住宅地になってしまってるんだろうと予想していたのだが、その一角に、かつての様子を伝える碑が建てられていたのには少し驚いた。しかも、化石が見られるようになっている。
せっかくの産地をどこにでもあるような住宅地に変えてしまったのは少しもったいないような話だが、意外に心残りは感じなかった。なぜなら、化石を探して暗くなるまで遊んだ遠い記憶こそが、私にとっては化石よりも貴重なものなのだ。
(2008年12月31日訪問)