
観音寺。寺町の南の端にある寺。寺の西側は実質的には港の土地のようなところであり、おそらく寺の前は昔の海岸線だったのではないだろうか。
寺巡りや神社めぐりをしていると、ときどき途方もなく普通の民家のような構えの寺社に遭遇することがある。

多くは貧乏寺なので民家のようなところに本尊を祀らざるを得ないというケースなのだが、時として、在来の仏教建築的な視点でいうところの本堂を建てず庫裏ばかりが立派な祈祷寺があったりする。
この観音寺はまさにそういうタイプの寺だった。

本堂らしき2階建ての建物は、通りに面したところには花頭窓があるだけで、その上の2階部に唐破風向拝が取り付けてあるという奇妙な構造(左最上段写真)。本当の玄関は寺の裏側の狭いところにある。そもそも、開口部のないところに唐破風向拝があるというのは理解不能。
普段なら2階建ての本堂にはすごくそそられるのだが、ここまで身も蓋もない民家建築だと、まったく興味が湧いてこない。
本堂の玄関の右側の小堂は大師堂。

玄関の奥には水盤舎があった。
本堂の内部では、講か法事のようなことが行われていたようだ。本堂というよりも信徒会館のような機能の建物だったかもしれない。

少し南西のほうへいったところに、観音堂がある。方三間の宝形造は、言葉で表せば普通の堂だが、よく見ると正面左右1間が白壁になっているというのが少し変わっている。納骨堂によくあるタイプのデザインで、私も初めは納骨堂だと思った。

内部に入ってみると、そこは観音堂だった。
まだ新しい堂だ。築20年くらいだろうか。

観音様の回りにびっしりと並んでいるのは、陶器製のこけし。おそらく水子供養のために奉納されたものだと思う。かなりの数があったので、寺はそれなりに繁盛しているのだろう。
(2001年11月24日訪問)