川原湯温泉の中の道を上りつめ、温泉街を抜けた先に小さなヨーグルト工場がある。そこでヨーグルトを食べながら、工場のおじいさんにこんな話を聞いた。
工場のちょっと先の土地は、昔はもっと低かったそうである。確かに言われた辺りの道路の路肩は1mくらい盛り上っている。その1mの土は大水が出たときに押し出されてきた(地滑りの?)土砂なのだそうだ。
その大水が出る前の日、たまたま川原湯温泉に湯治にきていたお客さんが急死した。そういうホトケさんが出たときは、町外れにある“カロウト(唐櫃)"に入れておいたのだそうだ。(カロウトとは石棺のこと。)
ところが家族が迎えにくる前に大水が出てそのカロウトが置かれていた一帯は土砂で埋まってしまった。
土砂は道路の先まで押し出してきて止まった。道路のあたりの堆積は1m程度だったが、それより上のカロウトがあったあたりは土砂が深くて、簡単にはカロウトを見つけ出せそうになかった。結局家族は遺体を見つけることもなく帰っていったそうである。
上の写真のあたりにはいまでもそのときの死者を入れたままのカロウトが埋まっているのだという。確かによく見ると木の枝が地面から低い位置から生えていることがわかる。幹の部分は土に埋もれているのだろう。
(2001年04月01日訪問)
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