職人町と柳町

城下町の袖卯建の町並みに清廉な用水が流れる。

(岐阜県郡上市八幡町職人町)

八幡町は吉田川を挟んで、南岸の商店街と北岸の城下町に分けられる。南岸の商店街も古い町だが、八幡城のふもとにある北岸の殿町界隈は卯建の続く町並みで、ひときわ風情のある地帯である。宗祇水を見た後はぜひ、この界隈を散策してみたい。

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宗祇水から北に少し歩くと、鍛冶屋町と呼ばれるエリアに着く。

宗祇水のあたりとは違い、観光客の姿はほとんど見かけない。観光客相手のあざとい喫茶店や土産物屋もない。

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さらに進むと職人町と呼ばれるエリアに入る。鍛冶屋町とは同じ通りの続きである。

ちょっと写真ではわかりにくいが、どの家も1階の軒に防火バケツを下げている。バケツには「職人町」の文字。

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職人町の突き当たりは長敬寺という寺になっている。

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柳町と呼ばれるエリア。

職人町の通りとは並行に続いている小路である。道幅は職人町の半分くらい。

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軒と軒が触れ合うような狭い小路である。

道の両側には用水が流れていて、その水は綺麗で水量も多い。郡上八幡はとても水に恵まれた土地なのだ。

一応「古い町並み」ということで、看板をあげているが、観光化されていなく、普通に生活が営まれている町である。

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テーマパークか映画のセットみたいに整った町並みで土産物屋を冷やかすよりも、このように現代の生活の中で自然に景観を残している町並みをただ歩くほうが楽しい。

こういう場所では結局自分は他所者なのだ。たとえ歓待されたとしても決してその町の住人になることはない。だが逆にそんな“他所者感"こそが、自分のホームタウンを離れて見知らぬ土地を旅する醍醐味なのではないだろうか。

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柳町で見かけた“唐臼"。一種の水車小屋である。鹿威しが大きくなったようなものと考えればよい。精米能力は高くないので、共同利用には向かず、通常は個人が所有する。

立地はいかにも観光客相手に作ったというような水車だ。こういうふうに公園に設置されて無目的に動き続けている水車を見せられると、「どうせ観光客は本物かニセモノかは気にしないし、適当に昔っぽいアイテムを置いとけば喜ぶだろ」とバカにされているような気分になる。

(2000年05月01日訪問)