愛川ホタルの里

山懐に抱かれた自然豊かな町。住んでみたい土地だ。

(神奈川県愛川町半原)

神奈川県の中央をほぼ縦断するかたちで流れている相模川の西岸には標高数百mくらいの低い山並みが続いていて、自然の豊かな土地が多い。私にとっては職場さえあれば住んでみたいと思う町が何ヶ所かあって、愛川町はその一つなのである。

さて、その愛川町にホタルの里という場所がある。町の有志が町内を流れる川にホタルの養殖場をつくっていて、季節となるとホタルを観賞できるのである。私たちが一般的にホタルと言っている虫にはゲンジボタルとヘイケボタルという2種類がある。ゲンジボタルが見られるのは、神奈川あたりであれば5月末~6月初旬である。5月最後の週末、友人と愛川町のホタルの里へ出かけてみた。

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ホタルの里は町の中を流れている小さな谷川の一角にある。別にホタルで町おこしをしようとか、そういう目的で行われているのではないようだ。

ちょうど、当日は日が良かったようで20~30人くらいの町の人達が見学に来ていた。無数のホタルが乱舞する様子は、ビデオやデジカメで写して伝わるようなものではないのだが、思わずシャッターを切ってみた。デジカメに写るほど飛んでいたのである。

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近くの草の葉に止まっていたホタルの近影。

ところでこのホタルの里、一つ残念に思うことがある。それは、ホタル養殖をやっている人が監視していて、ホタルに触ったり採ろうとする人がいると数秒以内に注意されることだ。

こんな光景があった。小学校に上がる前の子供がホタルに触ったところ、おじさんがすっ飛んできて「さわるとホタルが死んじゃうからだめだよ」と怒られてしまった。

すぐ横にいた母親は驚いて「すいません、知らなかったので。すいません。」としきりに謝っている。確かにホタルは弱い虫なので子供が乱暴に触ったら死んでしまうのだろう。だが、きっと子供にとってはなぜ怒られたのかわけがわからなかったに違いない。

だいたい、このようにホタルが見れる場所では、ホタルを採るなという場所が多い。だが私は幼い子供にくらい捕らせてやって欲しいと願っている。子供が1~2匹捕まえて持って帰ったくらいで、ホタルがいなくなってしまうわけではあるまい。家に持って帰ったホタルはきっとすぐに死んでしまうだろうが、そうやって子供は命がどんなものかを学習するのではないだろうか。暗やみの中でおじさんに怒られるという体験で、ホタルを触ってはいけないということを理解しなければならない現代の子供はふびんである。

(2000年05月28日訪問)