灯籠坂大師

切り通しを抜けると茶屋の廃虚が。

(千葉県富津市萩生)

愛川町でホタルを見た次の日、同じ友人と千葉へ出かけた。目的はウミホタルを見るためだ。ゲンジボタルとウミホタルで連日のホタル狩りを楽しもうという趣向なのである。

・・・とは言え、ただウミホタルだけを見るだけではつまらないので、お寺にも寄ることにした。家を出たのは昼の3時過ぎだったので、富津市に着いたのはもう夕刻に近い時刻であった。

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富津市を南北に走る国道127号線を南へと下る。有名な東京湾観音を過ぎ、道路が海岸線に出る辺りに怪しげな山門がある。灯籠坂(とうろうざか)大師の参道の入口だ。

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参道を進んでいくと、車がすれ違えないような小さなトンネルになっている。トンネルの壁は岩肌で掘り跡が残っている。

こういう小さなトンネルの中から出口を見る様子は絵になるのか、よく映画で見かける構図だ。

ちなみにトンネルを出るとラブホテルがある。

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そしてまたトンネルが続く。

今度は切り通しのような背の高いトンネルである。トンネルの天井高は8mくらいはあろうか。荘厳な空間であり一見の価値がある。

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このトンネルを抜けると、茶屋の廃虚がある。

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かつてはこの茶屋が営業できるほどの人通りがあったのか。

思うにこの道、今の国道が海岸線に整備される以前に、主要な道路だったのではなかろうか。

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茶屋のほかに線香やローソクを売る小屋もある。今は無人販売になっていてる。

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ローソクを買ったら、本堂までの道々にある灯籠に献灯することができる。

大師というが、どういうわけか鳥居が続いている。

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山道はスロープなのでちょっと登りににくい。

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山道を3分ほど登ると、無住の本堂に着く。参道の荘厳さからするとあっけないほどの小さな寺である。

房総にはこのように急峻な崖に貼り付いたような小さな堂が多く見られる。

平地が少ないというのもあろうが、砂岩をえぐって堂を建てるのは房総の特徴と言っていいのではないだろうか。

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奥の院。

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この石は持って帰ってもいいのかな。

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本堂の右手には小さな切り通しがあった。

もしかしたらこの道が“灯籠坂"なのかもしれない。

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トンネルを掘り抜く技術がなかった時代、まずこの道が開通し、人馬が往来したのであろう。

やがて参道の素掘りのトンネルが開通し、灯籠坂は街道ではなくこの寺へ登る坂道になったのだろうと想像される。

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ところで、この灯籠坂の途中にはやぐらくらいの小さな穴があって、中に“ヒカリゴケ"という光る苔がはえているのを見かけた。どうもこの両日は光るものに縁があるようだ。

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ヒカリゴケは厳密には発光するのではなく、外からの光を反射して暗やみで光って見えるだけである。(猫の目が夜光るのと同じだ。)ヒカリゴケという名前はちょっと誇大広告のような気がする。

(2000年05月29日訪問)