徳島で生産された葉タバコは、香川県高松市にある中四国リーフセンターへ集められる。
農家では葉タバコを部位ごと、品質ごとに仕分けしてから梱包材に包んでおくと、JTが手配した宅配便業者が回収する。農家からをJTにタバコを出荷することを「収納」と呼んでいる。
西日本の葉タバコはすべてここに集められる。遠い所では愛知県からも送られてくるそうだ。
集められた原料はここで鑑定されて格付けが決まる。つまり、買上げ価格が決まるのだ。
ただし、一方的に価格が決まるのではなく、格付けの現場に生産者が立ち合って、鑑定に不服があれば異議を申し立てることができる。この作業を「販売」と呼んでいる。きょう、11月26日は阿波葉農家の販売の日なのである。
阿波葉の最後の販売の様子を見学するために、わたしも会社の有休を取って高松まで来ていた。
阿波葉の販売は午前中に設定されている。
待合室には阿波葉生産者が勢ぞろい。
少し緊張の面持ちで販売が始まるのを待っている。
待合室にはタバコ生産の情報が張り出されていた。
土作りや使用可能な農薬の種類、病気の原因と対策など。
立ち枯れ病、疫病、空洞病、実際に今年はこれらの病気が目立った。
梱包に関する注意。
黄色種を例にした部位の分類と等級の表。
A、B、Cが通常のランクで、P、S、Mは不良品に相当する。
最も悪いMは異物が混入しているもの。
価格表。
第1黄色種は、徳島の県南地方で生産されている黄色種で、香味を付けるための品種と言われている。
第2黄色種は、徳島の吉野川流域で生産されている黄色種で、火持ちをよくするための品種といわれている。
品種によって若干価格が違っている。
不良品のP、S、Mランクはタダ同然の価格だ。
阿波葉は第3在来種に該当する。
このA、B、Cの格付けは事前に生産者を集めて標本を見る学習会が行なわれ、農家はそれに沿って梱包する。
リーフセンター平面図。
農家はうす緑色の会議机の並んだ待合室で待機し、時間になると鑑定場に移動する。
ピンク部分に「返戻」とあるのは、乾燥が不十分だった葉を持ち帰って再度乾燥するものだと思われる。乾燥が悪くて戻されて、黄色種の施設を借りて乾燥して納品し直したという話を聞いたことがある。
定刻になり、生産者たちは鑑定場へ移動。
全員が鑑定場に入るので、他の農家の成績もすべてわかってしまう。
農家から集められた葉がベルトコンベアに載って出てきた。
在来種と黄色種では梱包資材が違う。
これは在来種のクロス袋。
職員が流れ作業で開梱する。
タバコは開梱された状態で鑑定場へ送られていく。
鑑定の様子。
恰幅のよい背広姿の人は、タバコ耕作組合の寺井会長。農家だけでなく、組合を代表して鑑定に立ち合っている。
JTの鑑定員4人が品質を厳しくチェック。
表面だけでなく、中も確認する。
まるで学校で通知簿をもらうときのような緊張感。
すべてよい判定になって一安心。
1列目は梱包の番号、2列目の数値は重量、3列目は部位と鑑定結果である。
太い線があるところから、次の生産者に切り替わる。
農家にはつつましい人が多いので、微妙な判定で等級が下がりそうなときは組合長が助け船を出すことも。
不服がある場合は、鑑定員が端末を操作する前に言わなければならないのだ。
一部の葉を保存用のサンプルとして分けていた。
徳島の農家で生産された最後の阿波葉である。
阿波葉の生産を2009年でやめると決まったとき、もし途中で農家戸数が10軒を切った場合は2009年を待たずに中止するという内示があったという。
でも最終的に16軒の農家が最後まで阿波葉を作り続けた。
この1年でほとんどの阿波葉農家と顔見知りになっていたので、私も一喜一憂しながら鑑定を見守る。
最後の阿波葉の鑑定も昼前には終わった。
最盛期には1万人以上の生産者があった阿波葉も、その最後を見届けたのは一部屋に入れるほどの人数だった。
こうして400年間続いた作物がこの日終わったのである。
(2009年11月26日訪問)
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ムック – 2020/6/24
standards (編集)
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