知らない土地で、大して下調べもなくお寺巡りをするときはいくつか優先すべきポイントがあるのだけれど、そのひとつに「寺号が4字以上」というのがある。
これから紹介する「金剛宝戒寺」は5文字なのでその時点で素通りはできないお寺なのだが、さらに金堂があるという事前情報もあって、わくわくしながら参道を進んでいる。元町石仏のある崖線の下からは、山を登って一本道で金剛宝戒寺の参道になっている。いまは丘の上の住宅街になっているが、かつては里山の森の中を続く道だったのだろう。
私はいままでにたぶん何千ヶ所かのお寺にお参りしていて、あまりに多すぎて参詣する過程を覚えている寺は少ないのだが、この寺は参道がすっごく好みだったので、明確に覚えている。
ただしこれはマニア特有の悪い意味でのフェティッシュであって、一般人にとってはただの住宅街にしか見えないだろうと思う。実際ただの住宅街なのだが、崖線から寺の位置関係、その空間全体に「地方の気取らない名刹へ通じる道」のオーラをビンビンに感じてとってしまうのだ。
参道を進んでいくと正面に見えるのが金堂。
近世の寺院では「本堂」という形式が主流で、ひとつの建物で本尊を祀り、かつ、仏事も執り行う。しかし原初の寺院では本尊を祀る建物と、仏事を行う建物は別だった。それが密教の「金堂+講堂」形式や禅宗の「仏殿+法堂」形式であり、こうした原初の伽藍配置を持った寺はかなり希少である。
参道は金堂の右側を回り込むように続いていて、奥に見える本堂へと続いている。
いや、本堂ではなく「講堂」と呼ぶべきなのかな。マニアのこじつけかもしれないが。
金堂には鎌倉時代作の大日如来座像(国重文)が祀られているというが、戸板が閉まっていてまったく様子はわからなかった。
ただ、金堂の外周は見た感じかなり新しく、行っても大正時代くらいじゃないかという感じだ。内部の柱はわからないが。
次にあるのが中門の四脚門。袖塀には通用口がついている。
中門を過ぎると、正面に講堂。
左側には庫裏。
右側には鐘堂がある。
文化財の案内板。
観光客はまったくいない静かな寺だが、お寺の建物が好きな人は必ず立ち寄りたいお寺だ。
(2012年03月26日訪問)
古建築の細部意匠
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近藤 豊 (著)
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