本当に河原で、川が崖を削った崖線に掘られている。
河道からも近く、堤防も低いのでちょっとした増水で浸水しそう。
看板はあるが、造られた年代はまったく不明だという。
ただ、先ほど見た尾崎の石風呂が伝承では江戸初期ということなので、この石風呂もそのくらいまでさかのぼるのではなかろうか。
これまた、すっごく機能的な感じの石風呂だ。
左側にある家形の穴が石風呂、中央に宝塔を収めた祭壇、右側の四角い穴は湯をためた湯船のある浴室だったという。下部に竃のような構造があり、その上に五右衛門風呂が載っていたという。
このほか、石風呂前の左側には水を浴びるための池のようなものがあったというがいまは整地されたのかよくわからなかった。
最近、実際に使用したのか、室は煤けている。
構造は2段式で、中央の溝の中で火を焚く。溝の上には薄い石の板が並べてあり床が作られている。
この石の床が加熱できたら上に石菖などの薬草などを敷いて水をかけて蒸し風呂にしたという。
いやぁ、ほれぼれしますな。
室の右上に梵字が彫られていて、薬師如来を意味しているという。
内部は約2畳ほどの広さ。床の面積といい構造といい、尾崎の石風呂とほぼ同じだ。
壁は煤けているから、寄り掛かったりしたら真っ黒になりそう。石風呂はそういうものなのだろう。
湯船のある室は精緻な作りでこちらは年代が下るのかもしれない。
辻河原の石風呂の素晴らしいところは、休憩所があること。
新築の建物だが、石風呂は火を焚くあいだや、風呂を浴びたあとの交流など含めての活動だから、休憩所があることで現代人も往時の様子を想像しやすくなる。
休憩所の内部。
近代建築の割にはかなりいい雰囲気が出ている。
(2012年03月24日訪問)
異界神社 -ニッポンの奥宮-
単行本 – 2021/8/2
本田 不二雄 (著)
「ニッポンの奥宮」に往って還ってくること。そんな不要不急の旅でしか得られないものが確かにある。そんな神域に行かなければ埋められないピースが、われわれの心の中にはあるのだ。
amazon.co.jp