時間も遅くなったので、ひと風呂あびてから帰路に着くことにした。
きょうは諏訪湖周辺の製糸関係の遺構を見て回ったので、その締めとして片倉館の千人風呂に入浴していくことにする。
片倉館は戦前の片倉財閥が作った施設で、現在も日帰り温泉として利用できる。その建物は国指定重要文化財に指定されている。片倉財閥は明治初期に座繰製糸所として創業し、日本を代表する製糸会社となった。戦前、その財閥が福利厚生と地元への貢献のために建設した施設が片倉館である。
諏訪湖側、つまり建物の裏側の駐車場から見た片倉館の全体。
写真に向かって左側が浴場棟、右側が会議や催事のための会館棟だ。
こちらが浴場棟。
こちらが会館棟。
駐車場から回り込んで建物の正面側に来た。
こちらが会館棟の玄関の車寄せ。
(この時は特別な場合にしか使われていなかったが、後に見学できるようになったようだ。)
建物はRC造で、壁面はスクラッチタイル張り。
建物の全体の意匠はゴシック風。
会館の前にはタイルの美しい噴水池があり、全体的に異国情緒にあふれる空間になっている。
度肝を抜かれるのが浴場棟の正面だ。八角形の塔屋がまるで教会建築のようで、ものすごい迫力。国重文に指定されたのは必然といえるだろう。それが日帰り温泉として普通に営業しているので、気軽に立ち寄って全てをを堪能できるのだ。
入浴できる国重文の銭湯としては他に道後温泉本館が有名だが、実はちょっと利用形態が複雑で初心者は気後れしてしまうところがある。しかも何度か利用しないと「すべてを堪能」することができないという非常に複雑なシステム。
それに対して、片倉館はそこらの銭湯や日帰り温泉と同じノリで本当に気楽に利用できるのである。
ここはホントに日本? って思ってしまうような雰囲気。そしてそれが銭湯!
入浴料は750円。(2022年現在)
温泉だけと思えばちょっと高めだが、文化財の見学付きだと思えばリーズナブルといえるだろう。
当然、浴室は写真撮影できないので、これは案内板の写真。浴槽はプールみたいな大きなものと、小さなジャクジー兼スチームサウナがあるだけ。
この大浴槽は深さが1m以上あり、底面には玉砂利が敷き詰めてある。足の指で石を拾い上げて遊んだりできる。
ただし、ほぼ温水プールと同じ造りなので長時間だらだらと入浴できる感じではないし、洗い場のカランも少ないのでカラダを洗うことが目的で利用するのには向いていない。
2階へ行ってみよう。
贅を凝らした階段。
2階は休憩室になっていて簡単な食事ができる。
メニューは普通の日帰り温泉にありがちなカレーやラーメン、うどんなど。
2階からバルコニーに出られる。
バルコニーはこの部分になる。
諏訪湖の初島神社がよく見える。
尖塔や煙突を間近に。
会館棟の2階や渡り廊下の屋根を見おろせる。
この渡り廊下部分も国重文。
下諏訪温泉、上諏訪温泉エリアには泉質に特徴のある日帰り温泉もあるし、片倉館がある上諏訪温泉エリアはかなりディープな温泉地で奥が深い。
その中にあって、片倉館は正直泉質もあまり感じられず、温泉目当てで訪れるにはマストとは言えないが、建物が面白いので一度は体験しておきたい銭湯だ。
(2013年04月29日訪問)
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