多福寺

武蔵野の面影を残す静かな大寺。

(埼玉県三芳町上富)

きょうは埼玉県の南部、三富(さんとめ)地区に遊びに来た。東京都との境界にも近い場所で、私が住む群馬県からはフラッと来てしまったという場所ではない。

「きょうは三富で遊ぶぞ!」という感じで明確な意図を持ってやってきたのだ。

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まず目的地の近隣で柿屋といううどん屋へ。

このところ武蔵野うどんがマイブームなのだ。

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武蔵野うどんは冷たいうどんを熱い肉汁に付けて食べるものなのだが、この店は汁に黒と白がある。

これは白のナス肉汁。黒も食べたが、個人的には白のほうが好き。

ボリュームもあり、武蔵野うどん好きが満足できるお店だ。

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さて、腹ごしらえもできたので、最初の目的地多福寺へ向かおう。

多福寺があるのは三富新田と言われる、武蔵野の開拓地。そこを南北に抜ける通称けやき通りに寺の入口がある。この道は私が東京の大泉から北関東へ移動するときによく通るルートなのでなじみ深い。道の両側は開拓地特有の地割りが続く。

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多聞寺は江戸初期にこの地域の開発を行なったとき、都市計画的に地域の中核として新設されたお寺だ。つまりは比較的歴史の新しいお寺。

県道に面して石柱があり寺の入口とわかる。

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石柱から総門までは約400mほどの参道が続く。かつてはこの一帯すべてが寺の土地だったのだろう。

現在は住宅地が蚕食しているけれど、両側には雑木林が続いていて涼やかなので、営業車が昼の休憩に並んでいる。

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寺の奥に広い無料駐車場がある。

県南の大寺としては、新座の平林寺があるけれど、平林寺は駐車場も有料だし、拝観料もかかるからどうしても足が向きにくい。

それにくらべてここ多福寺はとても気軽に立ち寄れる。

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駐車場から総門はやや遠いけれど、総門から順に境内を見ていこう。

総門は塀の中にあり常時閉門しているが、境内に入るには山門を通らずに、右の通路をすすめばいい。

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総門は門扉があるから、一見すると薬医門のようにみえるけれど、裏側から見ると棟門だとわかる。

袖塀付き、吹寄垂木の豪華な棟門だ。

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この棟門から先は鬱蒼とした森。

このお寺は、お寺の建物を見るというよりはこの森を見るのが楽しみといってもいいだろう。

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寺の境内は7万坪あるといい、その大半が広葉落葉樹の森になっている。いわゆる、武蔵野の雑木林だ。

ただしバイオマスを生産するための薪炭林ではない。クヌギ、コナラといった樹種は大木になり樹冠が閉じていて、森の中は昼間でも薄暗い。

寺の境内地として300年以上管理されてきた一種の極相状態といってもいいかもしれない。

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寺の伽藍は、総門、山門、本堂が一直線に並ぶ、臨済宗形式。

総門から山門までは100mほどヒノキの森の中を歩く。

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途中にあった廟(?)。

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廟の前の狛犬。

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地蔵堂。

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内部には地蔵菩薩と大日如来。

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鎮守社。

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山門に到着。

山門は三間一戸だが、1階は壁がなく透けている。

曹洞宗だと山門に回廊が接続していたのでは、と確認が必要になるが、このお寺は臨済宗。雰囲気としては鎌倉の建長寺などに近い。

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山門の右手には通用門の薬医門がある。

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山門をくぐると、中庭になっている。

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きれいに手入れされているけれど、ちょっと樹が多すぎる感じがする。

本堂がよく見えない。

個人的な感覚だと、ここ、樹がいっさいなくてもいい位なのだよね。

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中庭の左側には観音堂。

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右側には井戸がある。

元禄時代に三富新田を開拓したときに掘られた、現在残る唯一の井戸だという。三富地区は台地で飲み水がなかったのでいくつか掘られたが、なかなか水が得られず、古い井戸は残っていないのだそうだ。

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鐘堂。

梵鐘は県文。

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本堂。

樹が多く、写真が撮りにくい。

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本堂の右側に玄関と庫裏。

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玄関も庫裏も本格的。

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中庭で見かけた、狭山茶の原種とされるチャノキ。

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本堂の背後には穀倉や庭園があるそうだが、入れそうになかった。

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墓地のほうにあった風情のある閼伽井屋。

(2022年04月12日訪問)