能仁寺を見たあと、以前に紹介した南高麗の辻時計のあるY字路へ来ている。

辻時計のＹ字路を左側の山道に入ると、石灰窯(いしばいがま)の跡があるのでそれを見学する。

2～3台の車が停められる駐車スペースもあり、道から文化財の看板も見えるので、石灰窯がどういうものかわかっていればすぐに見つけられるだろう。

「石灰窯」とは、石灰石から石灰を作るための炉である。消石灰はむかし学校の校庭なんかで白線を引いたりするのに使ったあれ。畑に入れれば土壌酸性度を緩和できるし、繊維質をまぜて漆喰として建築材料にもなる。

「石灰石」と「石灰」は字が同じだから似たような成分と誤解されがちだけれど、石灰石を砕いて粉にしたのが石灰ということではない。石灰石を熱で還元したものが石灰で、化学的な組成がそもそも違う。

石灰窯は石灰を製造するための設備なのだ。

どうやらこの場所で生石灰の製造が始まったのは戦国時代末期～江戸初期ごろと考えられているようで、かなり歴史が古い。

初めのうちは薪と石灰石を交互に積み上げて燃やす方式の平窯だったようだ。

途中からは竪窯という密閉した炉になり、現在確認できる遺構はこれ。

周囲を囲むことでより熱を逃がさず、より高温でムラのない焼成ができたのだろう。

明治30年代まで使われていたという。

周囲にはいまでも石灰石がころがっている。

遺構はよく保存されていてわかりやすい。

ただ、雑草も相当生えているようなので、見学するのは冬期がいいかもしれない。

上に登ってみたら窯の穴は落ち葉などが入るのを避けるために竹でふさがれていた。

この谷は行き止まりの静かな場所で、首都圏に近いわりに自然豊かな関東山地らしい山里だ。