愛宕神社の火番小屋

鳶口、まとい、ハシゴ半鐘などの模型を飾る珍しい民俗。

(群馬県板倉町海老瀬)

年末も近い12月28日に板倉町まで来たのは、火番小屋造りという民俗を見るためである。

以前にも一度来たことがあるのだが、その後、駅ができてニュータウン開発され、以前のイメージと変わってしまっていて、場所がわからない。

消防団分団の詰め所で忘年会をやっていたので尋ねてみた。火伏せの民俗だから消防団に聞くのが一番だし、もしかしたら当事者かもしれないからだ。だが、消防団のメンバーは誰も火番小屋を知らなかった・・・。

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しかたなくアテもなく町内を走り回っていたら、偶然その場所に出た。

消防団詰め所からは350mくらいしか離れていない。こんな近くなのに、なんで知らなかったんだろう。全員、ニュータウンの住人だったのだろうか。

でもとりあえず、この民俗には消防団はいっさい関わっていないということが判明したからよしとしよう。

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火番小屋民俗は愛宕神社の境内で行なわれる。

愛宕様はもともと火伏せの神様でもあるので、信仰としては合致している。

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まず神社から見ていこう。

社殿は入母屋造りの凸型拝殿。

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本殿は埋め込み式。

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拝殿の左側には石祠。

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右側にも末社のようなものがある。

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末社の右側には石塔群。

風化が激しくわかりにくいものもあるが、中央の大きな文字碑は下部に2頭の馬が彫られている。

文字は「百観音」かなぁ? 達筆すぎて読めない。

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火番小屋造り民俗は、仮設の小屋を建てて泊まり込み、防火の夜回りをするというものだ。

看板には「新暦の1月24日に近い日曜日」と書かれているのだが、たぶん間違いで「12月24日」だと思われる。

きょうは12月28日だが、小屋はまだ出来立てという風情だったからだ。以前に見に来たのもクリスマスのころだったのを覚えている。

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これが火番小屋だ。

露天商のテントみたいなワラ造りの小屋と、町火消しが使う消防用具の模型が竹で作られている。

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小屋はかなり粗い造りで出入口もない。現在は中で寝泊まりはできない。

かつては交代でここに泊まり込んで夜回りをしたためもっと立派な小屋だったという。

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道具類を見てみよう。

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これは手桶。

棒の先に桶を取り付けるという消防用具はたぶんないと思う。防火のまじないとして水の文字を高いところに掲げているのだろう。

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これは火の見櫓。

このワラつとみたいなものは半鐘の模型だ。

町火消しは竹ハシゴを使ったが、これは半鐘が固定されているので火の見櫓と考えるべきだ。

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これはたぶん(まとい)

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このL字型の竹は鳶口(とびくち)

もともとは木場で木材を動かすのに使う道具だが、火事の際には破壊消火で家を倒すのにも使われた。

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火番小屋づくりは他であまり聞かないユニークな民俗だ。あまり認知度は高くないようだが、いつまでも続けて欲しい。

(2012年12月28日訪問)

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