ザバー洞窟からの帰路。
途中にあったレンガ工場に立ち寄ってみることにした。往路で道を訊いた工場だ。
レンガ工場については、以前にミャインカレイ村で一度見学している。そのときは初めてだったのでけっこう見落としている工程があって、きょうはそのへんの反省を踏まえて、工程の全容をあますところなく見たい。
まずは工場の現場責任者っぽい人を見つけて、見学の許可をもらう。
といっても、私はミャンマー語はできないし英語も通じるのかよくわからない。でもまぁたいていは身振り手振りでなんとか伝わるものだ。
この工場は干上がった広大な沼地の中にあり、村からはちょっと離れている。
いちいち村から通うのではなく、出づくり小屋みたいなものを作って、家族総出で泊まり込んで働いているようだ。
ミャインカレイ村のレンガ工場でははっきり写真を撮れなかった土の採取場。沼地の灰褐色の堆積土を使っているようだ。地表から2mくらい掘り下げている。この沼の粘土の堆積がかなり分厚いことがわかる。
採土用地はまだ無尽蔵にあるし、洪水でもあればまた粘土が運ばれてくるのかもしれない。
ミャインカレイのレンガ工場や、ほかに知っている工場も、私が知る限りすべて雨季には水没する立地にある。
採掘場はまだ水の残る沼の近くにあって土は湿っている。掘ったり運搬したりしやすいように散水しているのか、あるいは、地下水がにじみ出ているのか。
掘り上げた粘土を頭の上に載せて運ぶ労働者。全体的に機械化されている工程は少なく、ほとんどの作業が人力に頼っている。
生のレンガを作っている作業場。
この部門は女性が中心だ。
運ばれてきた粘土はまずこのひき臼のようなところに投入され、柔らかくされる。
このひき臼と、粘土をマカロニのように押し出す機械は発動機で動いていた。
材料は、粘土、水、もみ殻である。
余計な水を排水する溝。
生レンガが見る見るうちにでき上がっていく。
どの工程も休みなく続けるにはそれなりに重労働だけど、意外にみんな笑顔で働いているんだよなぁ。
日本で自分はこんな笑顔で働いているのか、考えてしまう。
生レンガができ上がると、このネコ車で乾燥場へ運ぶ。
乾燥場は広いので、だんだんと輸送距離が延びてしまうのだろう。
生レンガはまだ柔らかいうちは、地表にベタに並べていく。
乾燥して硬くなると、今度は互い違いに積み上げて、さらに乾燥を進める。
カレン州のレンガには片面に溝がある。
この溝は、積み上げるときに目地のモルタルを逃がすための空間だという。
この溝の作りは、州によって違いがあるらしい。
いま穴のひとつに薪を入れているところ。
薪といっても、数mある樹なのだ。
窯の内部にもすきまを空けて生のレンガが積まれていて、火はそのすきまを回って炉の中全体が焼かれていく。
薪を投入したら、すぐ穴を閉じて密閉する。
燃料は大量の薪。
こちらは焼成が終わった窯。
焼き上がって酸化したレンガは赤っぽい色に変わる。
そのレンガをトラックに乗せて詰み出すのは男の仕事。
運び出された窯の内部。
けっこうびっしりとレンガが並んでいるのがわかる。
工場があるのは荒れ地の中なので、とにかく道のあるところまで運び出す。
村の道路の一角に製品のレンガが山積みされる。
客はここまでレンガを取りにきてもいいし、それができなければ有料で配送してもらえるはずだ。
レンガ工場を見つけるには、道沿いに大量のレンガが詰んである場所を目印にすればいい。
(2020年02月13日訪問)
ビルマ決戦記: 地獄の山野に展開した三十四万将兵の肉弾戦 (光人社ノンフィクション文庫 715)
文庫 – 2011/11/30
越智 春海 (著)
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