松江市内を離れ、
宍道湖と中海のあいだは大橋川という名前の川で結ばれているが、この川は言ってみれば名前を変えた揖斐川の本流である。
中海へ向かう途中、どうしても見てみたい場所があった。それが下写真(GoogleMaps)の矢印の部分、松崎島だ。通称、中ノ島ともいうらしい。
松崎島は、名前の通り孤立した「島」だ。川の中にあるので正確には「中洲」と言っていいかもしれない。
だが航空写真をよく見ると人家が!!
橋がなく、船でしか行けない中洲に人が住んでいる、これってすごい地形ではないか。私が生まれ育った北関東には、足利市の渡良瀬川の中洲に岩井という集落があって、幼な心にもしびれたものだが、惜しいことに岩井は今は陸続きになっていてしかも抜水橋が掛かっている。
なのにここ松崎島はいまだに船で行き来しているのだ。ちゃんと調べたことはないが、こんな中洲は国内には他にないのではないか?
もちろん島に上陸することはできそうにないから、とりあえず渡し舟の船着き場とおぼしき場所へ行ってみた。
対岸には人家が見える。現在は4軒18人が暮らしているという。建物は漁家ではなく農家のたたずまいだ。
松崎島は江戸時代から離れ島で、かつては、松江市の東部にはこうして船でしか行けな新田が広がっていた。大正時代の地図を見ると、松崎島には水田(湿田)と桑畑があったことがわかる。写真右側の2階屋は蚕室だったかもしれない。
現在、松崎島の2つ隣りの中洲までは抜水橋でつながっているので、あと少しでこの島まで橋で結ぶことは可能だろう。
だが、市の予算がないのか、あるいは、住民が静かな暮らしを望んだのか、いまもこうして自家用舟で行き来しているのだ。
こちら岸には簡易的な車庫が並んでいる。
松崎島の住民は日常の買物などをして帰ってくると、この車庫に自家用車を格納し、舟で島へと渡るのであろう。
私は週に1回くらいの頻度で、おかしな家に住んでいる夢を見る。家がとても不便なところにあったり、プライバシーがなかったり、迷路みたいな造りになっていたりするのだが、ここはそんな夢に出てきそう。
電気や上水道は対岸から引いているが、ガスなどはどうしているのか。舟で配達してくれるのか、小型のボンベを毎度自分で運んでいるのか。
もし抜水橋ができれば、そうした問題は一気に解決して、イオンから車で10分の田園の住宅地という位置づけになる。でもそれはそれで寂しくはないか。よそ者の無責任な感傷でしかないが、ここはいつまでもこのままでいて欲しい気がする。
(2005年04月30日訪問)
ワンダーJAPON(1) (日本で唯一の「異空間」旅行マガジン!)
ムック – 2020/6/24
standards (編集)
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