コンクリ舗装の道をさらに進んでいくと、警察軍キャンプの看板が現れる。(ミャンマー軍は、陸軍、海軍、空軍、警察軍の4つに分かれている。)
その先には、これから向かうパアプゥ山が見えてくる。
航空写真で調べるとキャンプの敷地を通り抜けるとパアプゥ村へ近道なのだ。思い切ってキャンプ正門のゲートまで行き、衛兵に聞いてみた。
「パアプゥ村へ行きたいんだけど、どうしたらいい?」
「敷地を通っていいよ」
なんと! 気軽に敷地に入れてくれた。でも、通り抜けかたがよくわからず、キャンプ内をほぼ一周してしまった・・・。
かろうじてキャンプの出口を探して敷地から脱出。
しばらく林の中を走ると寺の山門があった。
これは以前にパアプゥ山に登ったときに見えた水上寺院に違いない。(下写真は2014年にパアプゥ山から見た風景)
山門を入って少し進むとファンシーなカラーリングの建物があった。日本で見かけたら、まずラブホテルだと勘違いするような色合い。
こんな感じの3~4階建ての建物は過去にも僧院で何度か見かけたが、何なのだろう。僧房(修行僧が寝起きするところ)なのだろうか。
建物の入口のピンクの象がまた妙にラブホテルっぽい。
以前徳島に住んでいたのだが、鳴門市の大毛島にあったよなあ・・・こういうラブホテル。
僧房の横にあったのは、おそらく
「
その食堂にココヤシの実を運び込む人たちがいた。これは僧侶の食材ではないと思う。おそらく、中に祭られている聖人の像へのお供え物であろう。
食堂と思われる建物の前には、銀色のウサギの眷族が置かれていた。リンゴと思われる果実を食べている造形。
ミャンマーのお寺ではウサギは日月の「月」を表わす動物で、よく「日」のクジャクと対になって表現される。だがここでは「日」がないので、このウサギも月の眷族ではないような気がする。
食堂の横は講堂か。
修行僧が仏教を学ぶ授業が行なわれる場所であろう。
講堂の前にはやたらに背の高いデザインのパゴダがあった。
かなり個性的だ。
1970年代あたりののSFムービーに登場する、垂直離着陸型の宇宙ロケットのような雰囲気。
そのパゴダの横には2階建ての得度堂があった。
さらに小さなお堂がいくつも続く。
この僧院、意外に建物が多いな。
この道を進むと、おそらく池のほうへ降りて行くのだろう。
一つめのお堂の中を覗いてみた。
聖人紹介所のようだ。
「聖人紹介所」とは当サイトの造語で、伝説的な仏教の僧侶やナッ信仰の行者、あるいは現役の高僧などの人間を紹介するお堂だ。
八曜日の守り本尊。
ミャンマーでは、生まれた日の曜日によって、自分の守り本尊が違う。私は水曜日の午後生まれだから、牙のない象が眷族となる。
二つ目のお堂にはお参りしている人がいた。
中で何かを奉納している。
アコーディオンシャッターの先に見えるのは、たぶん、ポーポーアゥン。
僧衣に変に陰影をつけたせいで、マツカサウオみたいになってしまっているが。
さらに進むと広場があり遊具があった。
村の子供たちのための公園? いやちがう、この遊具で遊ぶくらいの年齢の子どもも出家するのだろう。
池のほとりまで降りてきた。
鐘つき柱がある。雨季の増水の水没対策か、基壇がかなり高くなっている。
用途は日本の寺の鐘つき堂と同じ。参詣者が自分でつけばよい。心の中で「仏に帰依します、経典に帰依します、僧侶に帰依します」と念じながら1人3回つく。
ムチャリンダ仏。
コブラ向背の仏陀像である。
これは、悟りを開いた仏陀のために龍神が雨よけの傘になったとされる説話を描いたものだ。
後ろに回ってみると、コブラのとぐろの様子やウロコの表現がやけに肉感的。
池の中にも堂がある・・・あれ?
以前の写真だと池の中のお堂は完全に岸から離れていて、ボートでもないと近づけなかったのが、橋ができている。
橋の途中には屋根のある休憩所がある。
橋は上から見ると十字架のような形をしている。つまり途中に三分岐があるのだ。
十字路の正面は、お坊さんでも住めそうな感じの建物。
寺の敷地の奥にあることから、得度堂かとも考えられるが、得度堂はすでにあったから別の堂だろう。
十字路の右側にはシンウーパゴ堂。
シンウーパゴは伝説の高僧で、時刻を知るために空の太陽の角度を調べている姿で表現される。
見上げている方向はよくある右向き。
十字路から左方向には建物はなく、橋は途中で途切れている。
その先にはパアプゥ山が見える。まるでこの橋はパアプゥ山を拝むために未完成になっているかのようだ。
岸辺にはほかにもまだ小さな2連パゴダを建設中だった。
このお寺へ行くにはパアプゥ村(サルウィン川の岸辺)方向から接近すれば警察軍キャンプを通過せずにすむ。堂宇を元気よく新築しており、3年まえと比べても華やかになっていた。観光で見に来てもいいのではないか。
(2016年12月18日訪問)
ミャンマー滞在記: クーデター直前
ペーパーバック – 2022/2/22
平野正和 (著)
amazon.co.jp