スウェドゥパゴダの北となりにある僧院。『地球の歩き方』や、ミャンマーの日本人向けフリーペーパーのヤンゴン市街地図にも載っているので、前から気になっていた寺だ。
なにせ、名前が「ナーガ洞窟」なのでどんなすごい地下空間があるのか期待が膨らむ。
山門は層塔型。でも、観光客っぽい人はまったくおらず、「ほんとにここでいいの?」という感じのまま、境内へと進む。
境内に入ると巨大な衆寮がある。
いや、衆寮というよりは校舎だ。
どうやら学校に入ってしまったようだ。
あらかじめ Google の航空写真でこのあたりの森の中にパゴダがあるのだけは確認していたので、いったん外に出て、学校の外の道を巻くように迂回してみることにした。
道を歩いていると、教室の窓からたくさんの学生が顔を出してきた。
「見ろよ、こんなところを外国人が歩いてるぜ~」
「ミンガラーバーとか言って手を振ってる(笑」
どう考えても、ここ観光寺院じゃない・・・。外国人なんて1年に1人来るかどうかってレベルのガチな僧院だ。
しばらく進むと、こじんまりとした山門があった。山門の上には二匹のヘビがいるので、ここがナーガ洞窟僧院の本体か。
本堂へ続く回廊と思われる場所に着いたが、もおよそ観光地とはいいがたく、寺の世話人の住居と一体化して雑然としている。
私もここまで、ミャンマーのパゴダや僧院にたくさん参詣して来たので、なんとか平静を保って歩いていられるが、不慣れな観光客だったら、ちょっと入れる感じの寺ではない。
ここが本堂への入口であろうという階段を発見。
ワニがお出迎え。
ワニは確か、ヤンゴンの町の成り立ちの物語に登場する動物で、ご当地では重要な動物なのだ。
階段をあがったところには、お坊さんの資料室があった。
有名なお坊さんなのだろうか。
彼が生前に使ったと思われる机やベッドなどが展示されていた。
ナッ神コレクションの展示場か。
やっとパゴダへと到着。
入ってきた場所は間違いではなかったのだ。
パゴダの基壇は正方形で、内部に入ることができる。
内部は二重の回廊になっていて、外側の回廊には仏教に関する物語が描かれていた。
内側の回廊は少し薄暗く、ショーウインドウみたいな中に仏像が並んでいる。
仏像は王様ふうの衣装をつけていて、ヘビの彫刻で飾られた玉座に座っている。
その仏像の前には、丸い石が置かれていた。これは何なのだろうか。人が手でさすったように金箔が剥げている。
日本だと、
内側の回廊の裏のほうは電気が消えていて、ちょっと不気味な空間だが、ひと回りしてみた。
でも、これは「洞窟」ではないよな。
建物の外側も歩けるようになっていて、外壁のところどころにこのように小さな八曜日の遥拝所がある。
きっと、洞窟はほかのどこかにあるに違いないと思い、境内を探索することにした。
えらくムチムチっとした誕生仏を発見。
2連鐘つき柱。
柱の上に謎の童子。
コブラ光背の仏陀。
台座がコブラのとぐろで出来ている。
その後ろには、無数の穴のあいた四角のパゴダがあった。
無数の穴の中には小さな仏像が収まっている。
仏殿か。
このシャッターがぜんぜんお寺っぽくないんだけど、ミャンマーでは宗教建築にもよく使われている。
中にはマハムニ型仏陀。
ウロチョロしていたら、修行僧が声をかけてきた。
「ナーガ洞窟の"洞窟"ってどこにあるの?」
「あの本堂がそうだけど?」
「あれは"洞窟"じゃないでしょ、建物でしょ?」
「あの本堂がそうなんだけどな~、しょうがないな、俺についてきな」
押し問答のすえ、僧院の裏の林の中へと連れて行かれる。
「これ。これがアンタの言う洞窟だ。」
不思議な
中をのぞくと、確かに深い井戸のような地下空間が。
井戸の底には少し水が溜まっていて、横穴が見える。
入ってもいいと言われたので、階段をおりてみることにした。
底まで降りてみると、水はわずかに溜まっているだけだった。雨季でなければ乾いているかもしれない。
横穴は2mくらいしかなく、中には仏像があった。
瞑想をするための場所なのかもしれなかった。
まあ、確かに洞窟といえば洞窟か。
それにしてもこの穴は何のために掘られたのだろう。ミャンマーの寺って、ほんと不思議な場所だ。
修行僧はそのまま、境内を案内してくれた。
奥の院っぽいパゴダ。
鐘つき柱はゴージャス。
その前には、キュートな賽銭箱。
「ここは禅堂だよ」
中にはよっぱらいの寺男がだらしなくごろ寝していた。
外国人に気付くと「なぁ、お酒くれよ~。お金、お金くれ~」という感じでからんできた。
修行僧が「アイツは無視して、中を見学していいよ~」というのだがさすがに遠慮しておいた。
境内は森の中にけっこう沢山の堂宇があり、このページの写真の点数では半分も紹介しきれない。
修行僧が順番に説明してくれたけど、こちらの英語力がないのであまりよくわからず。
六角堂。
ハスの花の形のパゴダがあった。
僧房の前まで来ると、
「じゃ、俺、ここまでだから」
といって去っていった。なんだかなんだで、20分くらい寺の説明に付き合ってくれた。どうもありがとう修行僧。・・・寄進すればよかったか。
きょうはこの後もメーラムーパゴダを目指しながら途中の寺をチェックする予定だったのだが、とぼとぼ歩いているうちに豪雨になってしまった。
折り畳み傘を差した程度ではびしょ濡れになるような状況だったので、人家のヒサシの下で傘を差しながら雨宿り。
近所の子どもたちが出てきて雨の中で身体を洗っていた。
そのまま天候が回復しなかったので、小降りになったところで大通りまで出てタクシーでホテルに戻った。
メーラムーパゴダ、なかなかタイミングが悪いなあぁ。
(2014年06月22日訪問)
ビルマ仏教: その歴史と儀礼・信仰
単行本 – 1995/8/20
池田 正隆 (著)
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