春日神社からほど近い集落に「前橋蚕種」という会社が地図に載っているので行ってみた。
この周囲は水田地帯だが、群馬県の平野部はコメと麦の二毛作なので、5月は麦の穂が一面に広がっている。
集落の中心部にあるちょっと雰囲気のある辻。
その辻から北へ歩くと、三つ櫓を載せた立派な養蚕農家が見える。
「有限会社 前橋蚕種」という会社の所在地である。立派な建物だが、どうも蚕種会社のたたずまいとは違う。
ご主人がおられたので話をうかがった。
前橋蚕種はもともと南東に3kmのところにある、ホームセンター「セキチュー」の場所にあって7棟くらいの施設があったそうだ。昭和6年の創業で、蚕の卵を生産し農家に卸し、繭になったものを買上げて販売していたという。蚕種会社というと、蚕種の販売だけをしていたのかと思ったが、どうやら繭の仲買いも事業としてやっていたようだ。販売先は粕川村など東毛が主だったという。
2003年に廃業して、現在は不動産業に業種転換して、「前橋蚕種」という名前だけが残っている。
この場所は、その経営者の実家の養蚕農家だったのだ。
軒先には、繭品評会に入賞した賞状が沢山貼られていたので、大規模で上手な農家だったのだろう。
蚕種会社の施設を取り壊したときに、外してきた表札がいまでも置かれていた。
もともとは、協同組合だったのか。
ほかに「前蚕」と印字された収穫カゴもあった。「前橋蚕種」を略して「マエサン」と呼ばれていたのだろう。
(2014年05月03日訪問)
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