椿泊近郊の神社をもうひとつだけ紹介してこう。
この日は阿南に水車を見に出かけたついでに、椿泊方面へ来ていた。
といっても、この神社は厳密には阿南市ではなく、美波町伊座利という地域にある。徳島県民はこの地名を聞いただけで口の中で唾液が出てしまうはずだ。県南で伊勢エビの町として知られる場所だ。でも紹介するのは海ではなく山頂の神社。
神社がある明神山は標高が441mもあり、この半島部分では最も高い場所。
神社はまさにその山頂にある。
付近には電波の中継アンテナなどの施設があるから、舗装道路で簡単に山頂付近までいける。
駐車場からは緩い登山道が続くが、登山というほどの登りではない。
周囲はウバメガシの森。
県南の海岸線に多く見られる植生だ。
程なく神社に到着。
神社の前には「いこいの家」と書かれた建物がある。
おそらく公共事業として神社の直会所を建てるのは問題なので、公共施設として予算化したのだろう。
実質的には信徒が祭りなどで使うための社務所であろう。
神社は石垣に囲まれた小さな木造の祠の本殿があるだけ。
徳島県の県南は台風による強風の被害が発生しやすい場所なので、堅牢な石垣が必要なのだ。
それでも木製の祠はおそらく頻繁に修理が必要だろう。
ミニチュアの城塞のような境内。
今日は薄曇りだけど、晴れれば東に和歌山県が見えるだろう。
境内にあった謎のイノシシのオブジェ。
狛犬とはちょっと違うみたいだ。
神社と関係があるものかどうか不明。
「祭神のいわれ」という碑があった。
毎度毎度思うんだけど、こうした石碑をわざわざ読みにくく作る意味ってあるのかな? ホント、こういう風潮やめてもらえませんかね。
北麓の椿町などの氏子70戸ほどが9月18~19日に祭礼をするということ、南麓の阿部、伊座利集落の信仰が厚いというようなことが書かれている。祭神は
境内からの眺望。
南西には、阿部集落と由岐港が見える。
南東にあるはずの伊座利の町と漁港は見えない。赤い屋根が点々とある尾根の裏の谷にあるのだ。
北側を見ると阿南市までが見通せる。
手前の島にある大きな煙突は四国電力の火力発電所。
同じ北側の下のほうを見ると、蛇行して流れる椿川が作り出した狭い平野が見える。
中央の山は、あと一歩のところで環流丘陵になれなかった巾着形の地形。
神社からの帰り、道ばたのノシバの中に動物の糞があった。ニホンザルかな。
その周囲にはサルトリイバラというツル性の植物が目立った。茎に小さなトゲがあって、猿もこの中を通れないというような意味だ。
徳島県民にはおなじみの植物で、この丸い葉で餡餅を包んだものが、徳島では「カシワモチ」と呼ばれている。
関東辺りで売られているカシワモチは柏の葉に餡餅を包むが、柏は比較的寒冷な地域の樹なので四国ではあまり見かけない。このサルトリイバラの葉が代用されているのだ。
私は個人的にあれをカシワモチと呼ぶのは無理があると思っているので、「バラモチ」と呼んでいる。
(2006年06月04日訪問)
古建築の細部意匠
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