南牧村というところは、ほとんど平地がない山深い土地だ。深い谷の傾斜地や川沿いの崖にはりつくように民家が建っている。
ここは六車片地という集落。背後は急峻な山になっていて、いわば崖下に人が住んでいる。
私は若いころ、この集落で不思議なものを見かけた。
1980年ごろのたぶん年末だったと思う。私はまだ10代で車の免許も持っておらず、南牧の山村の建築を見るため父の運転でこの六車集落の中を走っていた。1軒の農家の庭でイノシシを解体していた。珍しかったので車を降りて猟師さんたちに少し話を聞いたのだった。
そのとき、車に戻ろうとしたら道に軽トラが止まってるのに気付いた。荷台には小さなカゴを積み上げて満載している。カゴの中をよく見るとすべてに生きたウサギが入っていた。カゴの数は50~100個くらいあったろうか。一瞬ビックリしたが「正月が近いので食用のウサギを売り歩く人がいるのかな、山村ではウサギ鍋をつくる家もあるんだろう」と勝手に納得してしまったのだ。
いま思えば、あのウサギが何だったのかインタビューすべきだった。食用ウサギを生きたまま売買するなんてことがあるのだろうか。あれ以来、気をつけているが群馬の山間地でウサギ鍋を食べるという話は聞いたことがないのだ。
(2002年05月03日訪問)
