称名寺

相輪の付いた怪しい重層の堂。その正体はやっぱり‥‥。

(兵庫県加古川市加古川町本町)

西宮市付近のパーキングエリアで目が覚める。朝の7時だ。全身が気だるい。体はまだ寝足らないと言っていたが車のシートでこれ以上寝る気もしないので出発することにした。なんとか高速道を西に向かって走り出すが、朝の日差しが痛くて眼を開いているのさえおっくうだ。次のパーキングエリアでもう一度寝るしかないと思いつつ運転していると加古川という道路標識が目に入った。かつて一度だけ仕事の出張で訪れた町だ。その加古川市にはもう一度行ってみたい場所があった。ちょっと寄り道になるが眠気ざましの意味もかねて、加古川北インターで高速道を降りることにした。

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加古川市内で最初に立ち寄ったのが称名寺だ。写真を見れば、私がなぜ立ち寄ったかは一目瞭然だろう。

この堂、怪しすぎる…。さざえ堂マニアとしては見過ごすわけにはいくまい。

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正面へと廻り寺の駐車場に車を入れる。ちょうど分譲中の霊園の詰め所に業者の社員が出勤してくる時間で、こんな朝早くから観光寺院でもない寺の駐車場に停まる怪しい車に社員達の疑惑のまなざしが浴びせられる。周囲は住宅地だ。他に車を置ける場所などない。私はとりあえず車からデジカメを取り出して、わざとらしく右手にぶら下げることで観光客であることをアピールしてみせた。

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長い参道は垣根も綺麗に整っていて気持ちがいい。山門は両側に築地塀のついた四脚門。右側には庫裏が見える。

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そしてこれが問題の堂。不動堂である。2階に欄干があり登れそうな雰囲気がぷんぷんしている。

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屋根には相輪。2層の屋根は二軒(ふたのき)本繁垂木(ほんしげだるき)の扇垂木(おおぎだるき)になっていて、言うなれば塔の意匠だ。

1層は疎垂木(まばらだるき)。密度の違いが極端だ。

繁垂木というのは、垂木(屋根の裏側にみえる櫛の歯状の部材)が垂木の断面の横幅と同程度の間隔で高密度に並べる意匠。疎垂木というのは、逆に垂木の密度がまばらな意匠だ。軒に白く塗られた木口が並んでみえるので、密度の違いがはっきりとわかるだろう。

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堂の入口は閉まっていたがガラスの部分から中がのぞけた。内部は護摩壇になっっていて2層部分は煙出しになっている。

ぐはっ、やられた。‥‥と言いつつも、そんな予感はしてたんだけど。またひとつニセ2階堂のコレクションが増えてしまった。

寺の大黒さんらしき人がいたので尋ねてみたがやはり2階には登れないとのこと。

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本堂は、不動堂の奥にわき役のようにちょこんとあった。本堂の右側の通常は玄関があるような位置に毘沙門堂がある。その右側には方丈。

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不動堂の左側には大師堂。境内にはこのほかに観音堂、水盤舎、火伏せ八幡、切妻の単層鐘堂。

ちょっと寺の好きな人なら観光で寄ってもいい寺だと思う。

(2001年04月29日訪問)

福岡県の仏像 (アクロス福岡文化誌 8)

単行本 – 2014/3/30
アクロス福岡文化誌編纂委員会 (編集)

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