横蔵寺は揖斐川の谷にある。せっかく遠くまで来たのだし、もう一度この谷を訪れることがあるかどうかわからないので、揖斐川を少しさかのぼってみることにした。地図を見たがおもしろそうなものもなさそうなので、たまたま目に付いた洞泉禅寺という寺まで行ってみることにした。どんな寺かはまったくわからなかったが、一期一会の気持ちをもって渓谷を分け入っていった。
渓谷を抜けて小さな集落に入ると、洞泉寺は山の上にすぐに見つかった。本堂、庫裏、鐘楼の小さな寺だった。
寺のすぐ左隣には、吹き放しの観音堂(?)があった。茶堂の一種であろうか。
堂の脇には沢水を引いた水船があったので、寺を見ているあいだ、生ぬるくなったペットボトルのジュースを冷やさせてもらった。
堂の左横には草屋根の民家がある。向井潤吉という油絵の画家がいて、私はその人の描く民家が好きなのだが、この民家の屋根の古びた色の感じは、まるで向井潤吉の絵から抜け出してきたようで、しばし見とれてしまった。
(2000年03月20日訪問)
旅の手帖2023年2月号
雑誌 – 2023/1/10
旅の手帖編集部 (編集)
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