「常夜灯」という言葉はいかにも旅情を誘うものである。静岡県には旧東海道沿いにも常夜灯を見ることができるが、秋葉街道を中心に見られる常夜灯群は、信仰にもとづくものでもあるので、また一味ちがってくる。
秋葉街道の常夜灯というと、もっと質素な作りのものを想像していた。ちょうど、神社の境内に並んでいる“ぼんぼり"のような行灯を思い浮かべていたのだが、浜北市で見かけたものはあまりにも立派であるため、はじめ何であるかわからなかった。
左写真は岩水寺付近でみかけた常夜灯。胴体が亀腹のようになった大変優れた意匠のものである。内部にはいわゆるぼんぼり型の行灯が納められていて、その外側に立派な覆屋が掛けられているという構造になっている。
左写真は同じく岩水寺付近。
これは胴体は直線的で比較的シンプルな意匠である。隣には辻堂らしき建物が隣接しているが、現在は消防団のポンプ小屋となっていた。上の写真の常夜灯もすぐ近くに辻堂が建てられていた。
いずれも数段の石垣の基壇の上に建てられ、道路に対して妻を見せる切妻造。道路の反対側から献灯するための戸口が開いているという共通の構造が見られる。
左写真は引佐町金指付近。
やはり石垣の上に建てられている。ここは灯明が点灯していた。
現在でも献灯されているとなると、心がクラクラっとしてくる。街道の風景としてこれ以上に強烈な旅情を醸し出すものもないだろう。秋葉街道の常夜灯は今でも灯されているものが多いと聞く。いつかは常夜灯だけを見るためにこの地を訪れることになるだろうと思う。
(1999年11月23日訪問)