のぞみの園スターハウス

山中に四棟のスターハウスが並ぶ。

(群馬県高崎市乗附町)

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国立重度知的障害者総合施設「のぞみの園」。観音山の山中を開拓して作られた大規模な施設だ。以前は「国立コロニー」という名前だったので、いまでもその名前のほうが通りがよいかも知れない。

1971年に作られた当時は、ちょっと未来都市的な雰囲気の場所だった。入口にゲートなどはなく普通に入れるのだが、外界から隔絶した独特の雰囲気があり、当時子どもだった私は、なんとなくここは遊びで来てはいけない場所なのだと感じたものだ。

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そうして時間が経つうちに、いつのまにかコロニーの存在は私の意識のなかからすっぽりと消え去ってしまっていた。ところが、最近、ネットの地図で観音山を見ていて看過できないものを見つけた。

このページの右上の地図をクリックしてみてほしい。Y字型の建築物が並んでいるのが見える。

スターハウスだ。

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スターハウスとは、平面がY型になるように3方向に部屋を伸ばしたタワー型の団地である。大規模な団地を作るときに、シンボルになるようなカッコいい建物を造るという目的で建てられた。

一般にマッチ箱のような団地では、南側に窓、北側が廊下になるが、廊下は共有スペースなので、北側に大きな窓を付けることができない。スターハウスは、階段が中心にあり、放射状に部屋が伸びているため、各戸で2面の窓を開放することができ、通風などに優れているとされた。

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だが、実際にはあまり住みよくはなかったであろう。ベランダに出れば隣の住人の部屋が少し見えてしまうし、2方向に窓のある角部屋は、机や本棚などの配置に困る。

そういうことは、ちょっと考えたらわかりそうなものなのだが、当時としては最先端の未来住宅として人の眼に映ったのだろう。のぞみの園が完成したのは1971年なので、ほぼ大阪万博の時代だ。

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現在、のぞみの園の職員住宅として使われているが、多くは空き部屋のようだった。

この光景が見られるのもそう長くはないかも知れない。

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建物の中心は螺旋状の階段になっていて、3戸の住宅の玄関が集められている。

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螺旋階段を見上げたところ。

スターハウスで、最も感動的なアングルだ。

2019年12月現在、この建物はすでに取り壊されて更地になっている。

(2008年12月29日訪問)