鏡松のベーハ小屋

四方蓋造りの民家に寄り添うベーハ小屋。

(徳島県板野町矢武鏡松)

6月上旬、田んぼは田植えも終わり水が張られた状態になる。この季節になると私は田んぼの中のお墓を探して、よく吉野川の氾濫原をウロチョロしていた。

「田んぼの中のお墓」とは文字通り田んぼの中にあるお墓のことだ。私はこれを「タシマ」と呼んでいる。耕地や宅地の一角に墓地があるというのは農村ではよく見られるものだが、私がタシマと呼んでいるものは「田んぼの中の墓地」ではなく「田んぼの中の墓石」というニュアンスのほうが近い。

たとえばこれがそう。

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田植えをすると水から墓石だけが出ているというような状態になるので、当然、墓参は不可能。稲穂が実れば、コンバインを墓石にぶつけないように注意しなければならない、それがタシマだ。

板野町でタシマを探していると所々にタバコ畑を見かける。タシマの後ろに見える黄緑色の葉物が葉タバコだ。

畑は毎年同じ場所に畑を作るわけではない。黄色種は連作障害が出やすい作物だからだ。コメと輪作する場合は、コメの栽培で水を張るから土がリセットされ連作障害が起きにくく、輪作がやりやすいだろう。

なお、この場所については別記事で書いているので、そちらも見ていただきたい。

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そのとき同じ板野町で見かけたベーハ小屋。

奥に見える赤い屋根の主屋は四方蓋(しほうぶた)造りの民家。徳島を代表する古民家の様式だ。

さてこのベーハ小屋で注目すべき点は、南側の妻が破風繋ぎ型で、北側の妻が破風切り型になっていることだ。この写真では南側の破風が確認できる。

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北側に回ってみると、破風切りになっているのがわかる。両側の妻の納めかたが違うのは、徳島では割りとよく見かける気がする。

そう考えると、妻の所にある大型の扉は、タバコを乾燥させるときには開閉しないのではないかという気がしてきた。片側だけでは乾燥具合が均一にならないだろうから。

この扉は、タバコを出荷した後の清掃や換気に使うのではなかろうか。

(2007年06月09日訪問)