高瀬石仏

大分の他の磨崖仏と異なる特殊な仏が見られる。

(大分県大分市高瀬)

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大分市のはずれの山里へ移動。時刻はもう16:30。日没が遅い西日本とはいえ、ぼちぼち締めに入らないといけない。なにせ今日中に四国に渡り、八幡浜あたりで宿を探さねばならないのだ。

あと2ヶ所、なんとか最後の磨崖仏にお参りしてから九州を離れたい。

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高瀬石仏は山里の人家の路地を入ったところにある。

入口は狭いが、20~30m離れたところに10台以上は置けそうな広い駐車場があり、道路標識も出ているのでわかりやすい。

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高瀬という字は20戸くらいの農家がある行き止まりの谷で、そこから先は奥山になっていて人家はまったくない。

その谷の棚田の中の小さな崖に磨崖仏が彫られている。これまで見た磨崖仏の多くが現在は森になっている場所に造られていたがが、ここは本当に田んぼの中で、どちらかというときのう見た石風呂がありそうなロケーションだ。

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浅めの洞窟になっているが土被りも少ないため、磨崖仏というよりは石で出来た神殿といった風情。

東向きの壁面なので風雨や光線は避けやすそう。

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内部には5体の仏が彫られている。平安時代後期の作と考えられてるが、とても状態よく残っている。国指定史跡になっているが、国宝に近いほうの国指定だと思う。

写真の左から、大威徳明王、大日如来、如意輪観音、馬頭観音。どれも状態が良いのではっきりと特定できる。彩色があるのも大分の磨崖仏っぽい。

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そして、何よりも目を引くのは大威徳明王の左に彫られている深沙大将(じんじゃだいしょう)という神将。

髪形は『超人ロック』みたいに逆立ち、首には髑髏のネックレス、手には蛇がからみつき、腹には童子の顔が浮き出ている。半ズボンを穿いているように見えるのは双頭のゾウの顔で、ゾウの口から太ももが出ているという異形の塊のような姿をしている。「盛り過ぎだろう」って思ってしまうが、深沙大将というのはこういう特徴の神らしいのだ。

それが線画によってなんだかマンガみたいなユーモラスな姿になっているのだ。いつこの線画が掛かれたのか知りたい、造仏したときなのか、後世なのか。

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また、覆屋の外の右側にある小さな龕も必見。

これは「一根三茎仏(いっこんさんけいぶつ)」というモチーフで、中尊の両側に分岐した蓮の花があり脇侍が乗っているという三尊仏の古い形式だ。

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文化財の案内。

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高瀬石仏は保存状態もよく、珍しい異形の神で構成されていて他にはない特徴がある。

大分市で磨崖仏を訪れるならここは外せない、お勧めの磨崖仏だ。

(2012年03月26日訪問)