市場座跡

映画を上映するようになっても平場が桟敷のままだった。

(徳島県阿波市市場町市場上野段)

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川北街道の旧道に「箸供養(はしくよう)」という地域がある。住所で検索すると、現在はとても狭い小字なのだが、川北街道から市場町を短絡する間道の入口として、比較的認知されている地名だと思う。

不思議な名前の地名だ。いわゆる針供養などと同じように箸供養という行事をしている寺もあるけれど、この地名はそこから来ているのではないような気がする。ちゃんと調べて言ってるわけじゃないのだけれど。弘法大師がこの場所で箸を埋めたら芽吹いたとか、そういうのが由来じゃないかという気がする。

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阿波劇場で話を聞いたとき、箸供養にも映画館があったと言われて、探しに来たのだ。

いろいろ聞いてみると、その映画館は「市場座」という名前で、この路地の奥の印刷所がある場所にあったそうだ。

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地芝居のチャンバラ劇や浪曲などを上演し、末期には映画もかかったそうだ。中は桟敷席だったとのこと。売店で火鉢を貸し出していて、冬はそれで暖を取ったり、スルメを炙って一杯やりながら観劇したのだそうだ。

箸供養は、街道筋とはいえ商店街ではなく現在は普通の住宅地だ。こんな場所に芝居小屋があったというのには少し驚いた。

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この隣りのガソリンスタンド跡からも奥の敷地へ入れそうなのだけど、どちらが映画館への入口だったのかはよくわからない。

(2007年01月07日訪問)