県西の脇町へ来ている。きょうは脇町の町並みを見て、そのあと金比羅さんへお参りするという観光の一日にするつもりだ。
最初に訪れたのが大谷川の岸辺にある古い映画館「脇町劇場」。
脇町劇場を県民の多くが「オデオン座」と呼んでいる。しかし「オデオン座」は映画『虹をつかむ男』のロケ地になったときの劇中の名前であって、本来の名前は「脇町劇場」なのだ。
建物の雰囲気はすでに紹介した貞光劇場とよく似ている。貞光劇場が建ったのは昭和7年、脇町劇場が昭和9年で年代的にも同じ。ということは、貞光劇場の構造もこことだいたい似た感じなのだろう。
脇町劇場は映画館を廃業し取り壊される予定だったが、たまたま映画のロケに使われ、それが市民の保存運動につながって一命をとりとめた。現在は市指定文化財になっているので、もうこの姿のまま永遠に保存されていくことだろう。
いっぽうで、いま連載で書いている他の劇場は、同じような芝居小屋の遺構でありながら、県民に存在を知られることもなく人知れず取り壊されていくのだ。貞光劇場だけはかろうじて知られているが、それさえも取り壊される可能性は高いと思う。
中に入ってみよう。入館料は200円。
きょうはたまたま市民文化祭の日で発表会の会場になっていたため入場は無料だった。その代わり、自由に舞台に上がったりはできない。
引き戸を開けて室内に入ると、そこは完全に芝居小屋の世界。
映画『虹をつかむ男』を観ると、映画館時代には
文化財に指定されたときに、創建当初の姿まで戻すように修復されたのだろう。
花道もあるが、これも復元。
もしかしたら創建当初はすっぽんがあったかも知れない。
いま見える建築構造がそのまま創建時の姿ではなく、復元だとうことは覚えておいたほうがいいと思う。
2階桟敷へ行ってみよう。
映画館時代にも2階席の構造は残っていたようだが、客が入れたかどうかは不明。
階段を登るとこんな感じ。
芝居小屋はなんといってもこの2階からの眺めが好きだ。
個人的には、観劇するときも2階席のほうが好き。大衆演劇だったりすると1階平場部分は役者さんと目が合いそうで緊張してしまうし、花道に近いと「いま、おひねりを渡す場面???」みたいな状況になってしまうのが苦手・・・。
2階桟敷は2段になっている。前列は狭いので移動は困難。
2階の手すりは現在の建築基準では考えられないほど低い。よろけたら転落しそう!
向こう桟敷の奥のほうに天井桟敷みたいな席もある。
いまいるのは2階の左側。
こうしてみると、対面の2階の右側席はあまり人が入っていない。一般的に言って2階の右側は花道の真上になるので、花道が見えにくく人気がないのだ。
2階1段目の席の舞台寄りはすごく狭くなってる。
こんなところに座れるんだろうか・・・悪い夢にでてきそう。
(2005年11月19日訪問)
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渡辺裕美 (監修)
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