下関市の長府地区。かつて国府が置かれ、戦国時代には毛利輝元の養子、秀元が城下町を築いた地区である。ここでいくつかの寺に参詣するつもりだ。
まずはじめに日頼寺という寺を目指した。
すると寺の門前の通りが、どう見ても上級武士の家並なのだ。ちょっとだけ車をゆっくり走らせながら家々を見てみよう。
ある程度修景が進んでいて、土塀などが新たに造られているものの、まずこの道の広さがいかにも上級武士の武家屋敷街の雰囲気なのである。
で、具体的にどういう家が武家屋敷的かというと、こういう家!
もちろん母屋は建て替えられていて、戦後くらいの家が多い。いやむしろ江戸期までさかのぼる家はひとつもないのではという感じだ。
それでもなお、すごく武家っぽい家というのがある。
たとえばこの塀重門の家。狭いながらも前庭があり、門に対して玄関の位置が右にずれている。
こちらは棟門を持ち、玄関が左にオフセットしている家。
近代的な住宅では、通りに直接面して玄関を設けたり、あるいは、目隠しをする場合でも通りに対して90度の角度で玄関を造ったりするケースが多く、門から庭を歩かせて玄関へ入るというレイアウトは多くない。
もちろんこの地区のような広い敷地がないから、通りから玄関までのアプローチが短くなってしまうというのもあるだろう。だが武家屋敷的な雰囲気はこの庭と、門からオフセットした玄関によって醸し出されると私は思っている。
だからこのような古い建造物が一切ない家であっても、「ん? 武家屋敷か?」と感じてしまうのである。
これ以上あまり変な修景をせず、素朴な感じの町並みを残してほしいものだ。
(2004年05月04日訪問)
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