金長大明神と三連滑り台

三連の開放デッキ型ステンレス台。

(徳島県小松島市中田町脇谷)

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小松島市の市民運動公園の脇に「金長(きんちょう)大明神」という小さな神社がある。金長は四国では有名なタヌキ。義理と人情にあつい大親分で、徳島の名だたるタヌキのなかでも一番の人気のタヌキだ。(この感覚は関東で言えば国定忠次あたりに近いものかもしれない。)

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この神社は映画『阿波狸合戦』シリーズの制作会社からの寄付をもとにして1956年に建てられた神社だという。かなり時代が新しい神社なのだ。

『阿波狸合戦』とは徳島に伝わるとされる、狸を人間に見立てた仁侠モノの物語である。民話などの口承文芸の風情はなく、あからさまに原作者のいる文学作品と思われるが、いつごろ成立したのかは不明瞭と言っていいのではないだろうか。

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Wikipedia には江戸末期の成立とあるので、そうなのかも知れない。確実なのは明治末期には講談で広まり、戦前(昭和14年)に映画が出来たことは事実だ。

その後、阿波狸合戦のをモチーフとした映画は度々作られ、1956年ごろ当時映画を作った大映からの寄付でこの神社が成立したという経緯らしい。

だが境内は常緑樹が茂り、それなりに時代を感じさせる。

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拝殿の前には末社とおみくじ奉納所。

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その対面には水盤舎。

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本殿は流造である。

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拝殿の中にはおみくじの販売機があった。

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価格は1回20円。

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このタイプの販売機は電力を必要とせず、機械的なカラクリだけでおみくじを販売する。10円硬貨2枚で動作する設定にもできるのだ。

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社務所もある。

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護符販売所に並んでいたお守り。

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続いて公園を見ていこう。この公園の主役はなんといっても三連の滑り台である。

2003年ごろの滑り台観察者たちの間では2連滑り台が数多く発見されているので、いずれ3連の台が見つかるのではないかという期待があった。

これはその期待の中で初めて発見された三連装滑り台なのである。滑り台保存館#300として当サイトが典拠になっている。

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その後、blog等で遊具を紹介することも一般化し、より多くの並列滑降部を持つ滑り台が見つかっている。最新鋭の設備を含めれば4連~6連までは確認できる。

滑り台保存館では失われつつある滑り台の保存が趣旨であるから最新鋭の遊具は対象外となるが、いずれ当サイトでも滑り台保存館に収蔵するにふさわしい5連滑り台を紹介できる予定だ。

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形からいえば、開放デッキ・サイドアーチ型滑り台の3連結と言っていいだろう。

後ろから見たところ。タラップ部はほぼ密着している。壮観な眺めだ。

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柱はデッキ部の下とスロープの途中にあるのだが、梁は通しになっていて、柱は共有だ。

つまりこの滑り台は3台の滑り台をただ並べたというのではなく、もっと強い結合をしているのである。

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デッキの縞板は1枚のつながった板である。

いたるところ錆が浮いているので、ペンキの塗り直しなどが望まれる。

滑降面の状態は良好。ペンキさえ塗っていればまだまだ現役を続けることができそう。

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タラップはL字鋼を交互に溶接したような造りになっている。

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この公園の他の遊具も見てみよう。

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風車イス。イスに座って中心のハンドルを手で引くことで回転することができる。

類似遊具で、中央のキャップが取れていているところに指を入れた子どもが指を切断するという事故を起こしている。普通に遊んでいても回転させすぎると遠心力で子どもがはじき飛ばされるということが普通にありそうなので、狩られてしまうのではないかと心配な遊具のひとつである。

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遊動円木の骨。

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箱ブランコの骨。

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円柱型のジャングルジムと鉄棒。

ジャングルジムはUFOとか月着陸船をイメージさせる。

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カモメ型雲梯とラクダのライド。比較的新しく設置されたものだ。

この公園の古い遊具は、三連滑り台、風車イス、円柱型ジャングルジムだけになってしまっているが、いずれも個性的な遊具だ。古い公園だが見どころは多いと思う。

(2003年09月15日訪問)