道の駅のZガンダム

個人で作ってしまった全高7mのオブジェ。

(岡山県津山市宮尾)

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久米の里という道の駅に個人が作成した全高7mの(ゼータ)ガンダムのオブジェがあるという。せっかく近くまできたので立ち寄ってみることにした。

アニメガンダムシリーズには多くの派生作品があるが、『機動戦士Zガンダム』は第2作目の作品で、世界観的にも本流に位置づけられる。

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ロボットアニメは1972年制作の『マジンガー(ゼット)』において、主人公の乗り物がドッキングしてロボットになるというギミックを採用して大ヒットし、それ以降合体モノが飽くことなく続いていた。1979年に制作された第1作目のガンダムも合体ロボットの系譜の作品である。

しかし1982年に登場した『超時空要塞マクロス』によってすべてのロボットアニメのデザインに大転換が起きる。それは「人型のロボットが、立体物として破綻することなく乗り物に変形する」というものだった。

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『マクロス』によって起こされたパラダイムシフトの後、1985年に制作された『Zガンダム』は玩具会社の要請によって変形という機構が導入されることとなる。

だが、元々のガンダムの気密服のようなデザインから、フレームと外板からなるデザインへの変更は生みの苦しみを伴った。結局、無数の蝶番(ちょうつがい)とスカスカの内部構造で成立した変形のプロセスは、ただつじつまを合わせただけの複雑なパズルのようなものだった。

以来私は、日本の家電や事務機などで無駄に複雑で脆弱な可動部分を持つ商品を見ると、「Zガンダムかよ、これは! こんなもの戦場で使えるか!」と罵ってしまう。

とはいえ、『Zガンダム』という作品以後ガンダムは、立体物として手足の関節を動かし、劇中のポーズを再現できるデザインの完成度を持つに至った。

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このZガンダムの作者は、そのデザインを全高7mという大きさで立体化するにとどまらず、実際に脚関節を駆動して歩行することを目指していたようだ。

それがこの側面から見たときの、かかとの大きさで推測できる。

ボディは鉄のフレームにFRPの外板で構築され重量は2トンしかない。関節にはシリンダーも組み込まれていて、制御さえうまくできれば摺り足で歩行することは不可能ではなかったと思わせる。

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しかしこのZガンダムが実際に歩行したという話は聞かない。

摺り足で歩くにも、重心移動によって前に出す側の脚裏の荷重をゼロにする必要があるだろう。そのためにはバランスを崩さないようにセンサーやアクチュエータを制御をするソフトウエアが必要になる。

当然作者はそれを目指したのだろうが、何らかの制限で想定していた性能に達しなかったのではないか。

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背面を見たところ。

劇中のZガンダムは変形してスペースシャトル様の飛行体になるための巨大な翼を背負っているのだが、それは省略されている。

だがこうして見ても加工精度などは工業製品並みだし、「本当に動くのでは?」と誰もが思うほどの作り込みがされている。これを個人が一人で作り上げたというのは驚異的なことだと思う。

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なおこの道の駅の西の敷地には、金属製の五重塔がある。

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仏教施設ではなく、五重塔として見るべきところはないと思うが、とりあえず紹介しておく。

(2003年04月30日訪問)