今回の旅は、小学館の『日本列島現役水車の旅』という観光ガイドが出発点となっているが、すべてその本だけに頼っているわけではない。他の情報を参考にしたり、現地で人に尋ねてみたり、ソースはいろいろだ。
この場所は、周辺の状況から揚水水車があるのではないか推定して訪れた場所のひとつである。
大河吉井川の坂根堰の左岸に大用水という用水があり、この坂根はその取水口に近いので揚水水車があるのではないかとにらんだのである。
行ってみると、その大用水は川幅は10m以上ある2面コンクリートの巨大な用水路で、水車が懸けられそうな川ではなかった。
だがそれでも用水をたどっていくと1箇所だけ水車が懸けられていた。
川の中に打ち込んである杭が、個人の日曜大工で施工できるような場所ではない。もともとはこの用水はもっと小規模で、その時代から既得権として水車を設置していた農家があったのではないか。
水を汲み上げるための水筒は取り付けられていない。田に水を入れるタイミングを計るため、水筒を取り外せるように作られているのだろうか。
これまで岡山で見た他の水車では水筒は固定で、水受部分が取り外せるようになっていた。この水車はそれらと設計が異なっている。
水車が廻っているときに見たら、このポイントには気付かなかっただろう。
よく見ると、田んぼへの導水がサイフォン式になっていることがわかる。
水車から組み上げられた水は、白いパイプに導水され、いったん低い土地の地下を通って、先にある高い位置の田へ入るのだ。
用水と田のあいだに道路がある場合のやり方である。
(2003年04月28日訪問)
水車の歴史: 西欧の工業化と水力利用
単行本 – 1989/8/1
T.S. レイノルズ (著), 末尾 至行 (翻訳), & 2 その他
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