関口養魚場

前橋駅南のなつかしい風景を残す場所。

(群馬県前橋市文京町1丁目)

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かつて前橋駅の南口からJR両毛線に沿いにはたくさんの鯉池があった。

これは生糸の街前橋のもうひとつの顔でもある。製糸工場では繭から糸をとったあとに、カイコのサナギが残る。そのサナギを魚の餌として利用した養鯉業者が多くいて、前橋は養鯉業の町でもあったのだ。

むかしの前橋を知っている人ならば、「ここにも池があった、あそこにもあった」というように、いくらでも鯉池の場所を思い出せるころだろう。

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だがそうした鯉池も、ひとつ、またひとつと埋め立てられ、いつのまにか見なくなってしまった。

その風景をわずかに残しているのが、ショッピングモール・けやきウォークの近くにある関口養魚場だ。

もともとは道路をはさんで南北に池があったのだが、最近、南側の池が埋め立てられてコンビニが建った。このままだと、北側が埋め立てられるのも時間の問題と思われたので、写真を撮りに行くことにした。

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これが、2015年1月現在の国土地理院の電子国土MAPのデータ。地図にはまだ道路の南側の池が残っている。

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関口養魚場はどうやら、らんちゅうとメダカを主として、金魚を扱う養魚場だったようだ。

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訪れた2013年1月の段階で、どうもここで金魚を飼育しているようには見えなかった。

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思い当たる限り、ここが前橋の市街地で残った最後の養魚場ではないかと思う。

生糸の街前橋の風景として、ぜひ目に焼き付けておきたい。

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この池の横にはけっこう水量の多い用水が流れている。文京町の地図を見ると、他の道路が南北に整地されている中に2本の斜めの地割りがうっすらと見える。

この水路はその斜めの地割りの西側の境界になっている。この斜めの地割りは「女溝(おんなみぞ)」という古い地形で、平安時代までさかのぼるものだという。

(2013年01月27日訪問)

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