前橋市の児童遊園地「るなぱあく」は、いろいろと見どころが多い遊園地なので、いずれちゃんと紹介しようと暖めていたのだが、とりあえず「もくば館」だけをつまみ食い的に紹介しよう。
遊園地の遊具でメダマは「もくば館」だろう。東京都北区にある遊具メーカー昭和鉄工(株)が1954年に製造したものだという。前橋児童遊園地がオープンしたときからほとんど変わらずに残ってきた遊具だ。料金は1回10円。これも製造当時から変わっていない。稼働する日本最古の木馬といわれており、2007年に国登録有形文化財に指定された。
取材したのは1993年3月。文化財登録される14年前になる。この時点で児童遊園地の遊具は創建時のものはほとんどがリプレースされてしまっていて、もくば館の古さは際立っていた。
さすがに「いずれは文化財指定されるだろう」という読みはなかったが、無くなる前に写真を撮っておかなければと思わせる物件だった。
しがたって、この写真は1993年のものである。
この木馬で着目すべき点は、手綱、鞍、あぶみのベルトが本革製であることと、硬貨投入方法が独特だったことだ。
この木馬で遊んだのは、それこそ幼稚園か小学校1~2年までだと思う。そのときのことを思い出すと、手綱や鞍が革製だったため、他の乗り物とは違う「渋い大人の遊具」というふうに思っていた。
当時、テレビで西部劇が人気だった時代でもあり、このもくば館は遊具というよりも西部劇ごっこのためのステージという雰囲気だったのだ。自分がこれから演じなければならないのは、カウボーイなのか保安官なのかアウトローなのかインディアンなのかを決めて、それなりのロールプレイが求められているような気がした、大げさではなく。
鞍に跨がり、あぶみに足を通すときにはちょっと大人になったように感じたものだ。
独特だったのが硬貨の投入方法だ。断面C字型の鉄製のスリットが床からつき出していて、その先端から硬貨を落とすようになっていた。ときどき硬貨が途中で引っかかったりしたものだ。それゆえ、木馬にまたがってから硬貨を投入する瞬間にも緊張したことを覚えている。
投入された硬貨は床下に溜まるのだと思うが、どうやって集金したのだろうか。
なお、文化財指定される前に解体修理が入り、どこにでもあるような料金入れに変わってしまった。個性的なシステムだっただけに改修が惜しまれる。
(1993年03月21日訪問)
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